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「わが青春に悔いなし」
監督・黒澤明
主演・原節子

 黒澤作品ということで、一番楽しみにしていた作品。

 GHQ推奨の民主化作品ということで、敗戦後の翌年に制作されています。
 あんまり政治的なことを書くのは、好きではないのですが、
GHQが絡んでいるということもあり、この時期にこれだけ、コロっと
態勢が変わった映画をよく作るなぁ、、と呆れるほど、、。
 戦時中がいかに悪くて、戦争が終わっていかに人々がのびのび
生活できるようになったかを実際の事件になぞらえて描かれています。
 初期の黒澤作品とは言え、カメラの中井朝一とか
主要スタッフはもうほぼ揃っている感じ。
  
 原さんですが、正直、この人、目と鼻が大きくてカメラとフィルムの
性能のよくなかったころの女優さんだなというのが、第一印象。
 美人ではあるけれど、そんなに飛び抜けた感じじゃないな、、と思っていたのですが。
 しかし、どこか、その大きな造作の顔とは裏腹の控えめで質素な
キャラが演技などからにじみ出てくるようです。
 小津さんとの作品が有名ですが、黒澤さんとは、この作品と
「白痴」でタッグ。

 ただ、他の監督さんの作品に比べ、黒澤色が映画後半に出まくっています。
 近所中を敵に回して、田んぼで泥だらけで作業する壮烈なシーンが続くのですが、
 原さんが泥だらけになっているだけで、心と身がが締め付けられるようです。
 画面に勢いや、動きをつけることが好きな黒澤ティストがもうすでに出ています。
 前半の穏やかな学生生活が遠い昔に思えるほどの
後半の田舎での壮絶なシークエンスとなります。
 
 男優には厳しかった黒澤さんですが、女優には、演技指導が甘く、
もっと厳しくやってほしいと女優から懇願されたりしていたとか、、。
 その証拠というか、女優はあんまりこだわりがないというか、
コロコロ変えているでしょ、、。
 
 ただ、言っちゃいけないこととは思いますが、
この敗戦後のこの時期にこうも時流に合わせておもねった作品を作るのは、
 ズルい気がします。

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☆☆☆☆