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「蠢動 -しゅんどう-」
監督・三上康雄
主演・平岳大

 本作の映画監督、三上さんの全く知らなかったのだけど、
この映画、マジで、すごい。 

 自身の「蠢動」という映画のセルフリメイクらしいんだけど、
これ、製作者も、多分、奥さんか、娘さんか、母親か、ご家族だと
思うのですが、早い話、これ、自主映画なんです。
 で、これだけのクオリティというか、
まぁ、岡本喜八さんも晩年は、ほぼ自主映画の感覚で、奥さんと
一緒になって資金繰りから、なにからやっていたらしくて、
日本の実写映画でも、自主映画ってよくきくのだけれど、
自主映画ということ割り引いてもすごいっす。
 だけど、ググるかぎり、あんまり、きっちり
リメイクした作品じゃなくて、オリジナルの80年代の
作品は見てませんが、スピリッツぐらいがカバーされてるぐらいで、
資金集めのスポンサーの関係上、「蠢動」とつけざるをえなかった
ぐらいではないのでしょうか、。
 岡田斗司夫さんも、「オネアミスの翼」のとき、いやいやバンダイビジュアルに
せまられて、オネアミスってつけたっていってたから。
(本当は、王立宇宙軍でいきたかったらしい)  

 ただね、この映画、早い話、こんな風に例えると、
いい意味で良くないのかもしれないけど、
まるまる藤沢周平の世界なんですよね。
 藤沢周平の藩も寒い、東北の海坂藩でしたっけ。
 キングのキャッスル・ロックみたいなもんです。
 それが、山陰の雪深い某藩になった感じ、とにかく、雪が寒そう、、。
袴の濡れ方が寒そう、、。
 武士像の捉え方とか、社会というか、組織における武士の
描き方とか、本当に藤沢ワールドそのまんまといってもいいかも。
 はっきり言って、目線が低くて、いつも全体のために虐げられる個
からの目線で描かれている感じです。
 あまりにも、藤沢ティストなのが、良い点でもありもう一つ独自色
がでなかった悪いとことかな、、。
 だけど、すごいです。自主制作映画として下駄を履かしてしまうのは、
いかがなものかとも思うけど、
これ、逆に、大資本とはいえないまでも邦画全体の予算が低いことの証明でも
あるし、アニメと同じ自由度が担保されているともいえますよね。
 まぁ、おうちが抵当に入るくらいで作っているのかもしれなくて、
相当、資金繰りは大変だったと思いますが、
 藤沢ティストって書きましたが、いつも思うのですが、
時代劇ってきっちり45分後に切り合いがあるドラマを除くと、
ほぼ、藩のお話ってそのまんま、日本人の社会状況というか、
会社だったり、学校だったり、近所だったり、日本人の村意識を
そのまま描かれててまさに身につまされる。
 よくローラの「大草原の小さな家」
のドラマがアメリカの現代劇に見えるように
時代劇から何一つ、精神性、日本人の心のありかたは、変わっていないんです。
 主演は、平岳大さんで、多分セリフも一番多いと思いますが、
個人的には、香川の弟ひろきのほうに、感情移入して見てました。
 あと、その香川のお姉さんにあたるさとう珠緒が、めっちゃいい。
 本人はバラエティで歳を感じさせぬぶりっこ天然キャラで
多分異性よ同性の反感をかっているでしょうが、
 演出一つでこんな魅力を引き出せるのだなぁと、感心した次第。
 めっちゃいいキャスティングと演出。
 家のせいというより、父親のせいで破談になり婚期をのがしたものの
弟の友人と結婚が決まってる、心配性のお姉さんで、
ほんの小さな石橋を渡るときに、無理から、その年下のいいなづけに
姉さん女房的に手を添えて、って手を引かせるんですよ、、、、。
 ああいうのって、女性するんですよ、、、。男性から言わせると。
 自分への愛を試すというか、自分がどれくらいに思われているか試すというか、
 まぁ、弟の友人なので、教えてやってるぐらいの感覚かもしれないけど
 あの演出はめっちゃ関心しました。

 めっちゃ持ち上げた、本作ですが、
 ただ、若干総合的な安っぽさが見え隠れするところが
多少ないわけでもない。
 これは、洋画と邦画の予算10倍の差と同じで、画角に
予算全部つぎ込んで作るんだから、どうしょうもないです。
 ただ、製作、脚本、監督までこなしている三上康雄に
 各映画会社やTV局の映像コンテンツ製作プロデューサーの方、
愛の手を、、、。

 ただ推測するに、こういう監督さんって、型にはまった
題材だと撮らないんでしょうね、、。
 評価、☆5つか4つかで迷う。

評価
☆☆☆☆☆。