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「バリー・リンドン」
監督・スタンリー・キューブリック
主演・ライアン・オニール

 私、キューブリック・ファンであるにも関わらず、何度もこの映画
途中で投げ出したことがあります。
 今回気合いを入れて、しっかり見たら、
なな、なんと 意外とおもしろいじゃん。
 という感想に。
 
 ロココ様式が大好きなキューブリック。
(私は今ひとつバロックとロココの違いがわかっていませんが)
もともとはナポレオンを題材に撮りたかったそうですが、
予算とか諸事情でおじゃんに。ほぼ同時期の偉大なる作家サッカレーを原作に
本作を撮りました。
 見たかったなぁ、、。キューブリックのナポレオン。ワーテルローとか、
戦争と平和 1956 とか、結構あるんですけど、正面から全生涯を描いたのって
シーザー何かと違ってないのではないのでしょうか?。
 英雄かもしれないけど、フランス以外から見れば、
皇帝にまでなった独裁者だし支配者ですからね。
 本作でも、3時間強あるのに、それこそ、ボンダルチュークの
6時間Verぐらいになりそう。

 それと、打って変わってといいますか、本作でも、英国の7年戦争
が描かれるのですが、意図的に外してるというか、
シーン短いし戦争の大人数と大人数がぶつかるスペクタクルとか、そう見えるように
撮っていないですね。
 あれはきっとわざとだと思います。
 そのかわりに、衣装、セットの画面構成というか、このブログで再三再四
強調しているプロダクションデザインですね。
 それが、考証するほどの知識はありませんが、完璧らしい。
 有名なのは、蝋燭の光の撮影ですね。これも再三再四書いてますが、
もちろん照明さんも頑張ったでしょうがカメラとフィルムの感光の技術改良も
めっちゃ大きいと思います。
 邦画でいうと、江戸時代のPDにめっちゃ凝った時代劇みたいな感じでしょうか。
 江戸時代も蝋燭の火じゃなく、行灯の明かり。
 街灯もない時代、辻斬りや泥棒、夜鷹のひともおしろいを塗っとけば、
そうとうカバーできたのではないでしょうか。
 誰かそういうのに凝った時代劇をとってほしいな。

 カメラの移動ですけど、本作は、キューブリックお得意の
無限深淵移動がほぼ皆無。
 というより、止め絵の多いこと、多いこと。
 場面転換になると決まって絵葉書みたいなきれいなカットで
建物と場所を写し、人物が何処に居るかおしえてくれる、という
もう古典中の古典みたいな撮り方をしています。
 もうこの、ロココ式の建築と内装にキューブリック自身が
いかに惚れ込んでいるかが理解できます。

 カメラはあまりキューブリックらしくないんですけど、
その分、ドラマは完全にキューブリックティストたっぷりで、
逆にこれ皮肉に取ってギャグなんじゃないかとさえ思えるほどの
悲劇というか、運命というか、、、。
 リンドンという貴族の称号を一介の平民が得て失うのかな、
最後は、、。を描いているんだけど、
 全然うまく言ってないじゃん、と。
 いろいろあって成り上がっていくんだけど、あんまり幸せ感が
ライアン・オニールから感じられない。
 逆に、ぐーの音も出ないような状況に追い詰められて
絶望のあまり言葉がでないR・オニールの表情を何度見ることか。
 この辺、「現金、、、」の小さな犬が走っただけですべてが
水疱に期してしまうあたりによく似ています。
 残酷すぎる運命に翻弄される主人公。
 また再三描かれる決闘そのものが、ギャンブルで運命ですよね。
 ギャンブラーとともにするあたりからお金がたくさん入りだすんだけど、
結局はイカサマを申し立てられて決闘しなくてはならないとか、
笑っちゃうレベルのハードさです。
 リンドンの爵位を得ても息子は死ぬし、家庭内はギスギスだし、
最後には、連れ子に決闘を申しこまれるという。
 原題はバリー・リンドンの幸運というんだけど、
これで果たして幸運なのか、因果応報というか、
それ相応の人生を生きたような気がするけど。

 ただ、長いわ。3時間ちょうどぐらいだけど、
ナレーションでずーっと引っ張っていくので、余計に長く感じられるのかな。
あと、カメラの動き自体も人物の動きもあんまりないしで。
 構成としても、ラスト付近で予算をかけて煽るとか
全然してないでしょ、平坦に線をずっと引いている感じで。

 バリー・リンドンのへんてこりんな運命と
素晴らしすぎる衣装と美術を堪能する映画だと思います。

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評価、☆5コあげてもいいけど、客観性を持つと
☆☆☆☆だな。