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「愛と死の記録」
監督・藤原惟繕
主演・吉永小百合/渡哲也

 タイトルどおり、広島の原爆を扱った悲恋もの。
 意図的にだと思うけど、モノクロの映像で過剰な演出を加えず淡々と
ドキュメント・スタイルで撮っています。
 これも意図したものだと思いますが、それが余計に
ドラマ性を重く鑑賞者に与えます。
 映画というフィクションですが本当にありそうな
物語ですよ、、と語りかけているわけです。

 内容も、日活の娯楽プロダクション・ムーヴィーとは打って変わって
文芸路線の超どストライクの直球勝負です。
 また、芦川いずみさんの役どころなど、本当にちょっと前に
原爆が実際に爆発した事実そのものを私達に突きつけているようです。
 とまぁ、どう説明すれば良いのかわからないんですが、
映画や演技の演出とか別個に政治的にというと、穿った
見方になるけど、実際に被爆国になった日本人の心に
かなり強烈に投げかける内容で、これを悲恋もののドラマで
商業作品としてどう評価したらいいか、正直悩みます。

 また、ネタバレになりますが、この過激なラストも
理解と評価が難しい。
 普段の日常を取り戻しつつある吉永小百合さんが、
弟へのプレゼントで自転車を購入するあたりから、音楽の黛いちろう
さんの壮烈な劇伴がどんどん真に迫ってきます。
 このブログでも前に書きましたが、映像媒体で劇伴(OST)って
井筒監督が言っていましたが、映像より音楽のほうが常に必ず勝つそうで
まさにそれを狙った演出。 
 急転直下への観客を裏切るようなラストは正直説明不足とか
もう少し心理描写を、、とかいいたくなりますが、
 これは映画としては”あり”だと思うしドラマ性という意味では、
これ以上のエンディングは無いと思う。
 ただ、映画の趣旨とかテーマとか考えるとこれは”なし”こんな安易に
観客とドラマの悲劇性を煽って終わっていいのだろうかとさえ
思っちゃう。
 こういうことを、書く事自体。映画のちからでそのものに
ハマっているんだと思いますが、、。

 あと、若い中尾彬が出ていることにびっくりしました。

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評価。
☆☆☆。