Sanjuro poster 

「椿三十郎」
監督・黒澤明
主演・三船敏郎

 「用心棒」と双子関係にあるこの作品。
というか、制作順も次作ですし、続編なんですけど、、。
 黒澤さんって頑なに続編を作るのを嫌っていたかと
いうと、「姿三四郎」が失念していました。

 「用心棒」と本作どっちかといわれると、私的には圧倒的に
「用心棒」なんだなぁ、、。
 まず、「用心棒」のほうが完全なノワールだし、
邦画で誰も考えなかった西部劇のスタイルで作ったちゃんばら映画だしで、、。
 今回見直して思ったけど、
「椿三十郎」ってアクション映画っていうより
コン・ゲームの要素が強いんですよね。
 元々剣の腕がだめな人を主人公にした原作だったらしいし。
 
 桑畑三十郎が、椿三十郎になって帰ってきました。
元々椿の花はぼとっと落ちることから、
お侍さんには首落ちる様に似ていると言われ嫌われたそうですが、、、。

 女優は団令子さんと入江たか子さん。
入江たか子 団令子

団令子
 団令子さんは東宝の看板女優で、クレイジー・キャッツとか植木さんの
作品なんかによく出ていますね。 
  顔の造作は派手な感じですが、丸顔が親近感を持ちやすいみたいな、、。

コミック・リリーフ
 入江たか子さんも、戦前の無声映画のころから活躍するお姫様女優だったとか、、。
この映画では、ふたりとも完全なコミック・リリーフの役回りですが。

 コンゲームと書きましたが、どこかのんびりした感じで、楽しい感じなんですね。
で、またこんなに企みが全部うまく行くはずないとも、思っちゃったりするわけで。
三船敏郎 仲代達矢
 なにやら思案中の二人。

 ワタシ的には、少し評価を下げている作品です。
 今回見直して思ったのは、仲代達矢さんが良いですね。
仲代達矢 アップ
 このドスの利いた存在感のある顔付きを見よ。

 「用心棒」の卯之助はなんか存在感も台詞回しも弱いなぁ、、と
思っていたんですけど、丑寅がいい味を出しています。
 今回は悪の部分を1人で担っている感じです。
 「用心棒」で白っぽかったので、今回はドーランを塗りまくって
真っ黒にしたら出来上がったらしいですけど。

 もう話し尽くされた話題かもしれませんが、チャンバラの折に
人が切れるブシュという音を足したのが黒澤さんということになっていますが、
「用心棒」を見ていたら、なんとあら不思議。全然音がしない。
「用心棒」では、一回切られたぐらいで人は死なないだろうということで、
1人2回切ったことでも有名なんですが、本格的に音を入れだしたのは、
私が見る感じ、当作品からです。
 そしてそのすごい殺陣。40人斬りの殺陣のシーン。
ちゃんばら

ちゃんばら

 これも、リアルに言うと、全員がきっちり死んでいるとは思えず。
誰か、駆けつけた仲代さんに虫の息で報告しそう、、。

 そして、日本映画史に残る切り合いというか、居合いというか、
のシーン。
ラストちゃんばら

ポンプ

 もうなにも申しません。

 「用心棒」ではね、卯之助が切られてから、優しんだなぁ、とか、
そいつをもたせてくれ、、とか、
 卯の助が色々しゃべるんですね。あれは、ちょっと要らないなぁと
思いながら見ていたんですけど、
 今回は、あっさり。これは、いい感じです。

あばよ

 そしてあばよ、と。
 肩を大きく揺する癖が出るのはここだけかな、、。
 もっと前半でいっぱいしてほしかったなぁ、、、。
 
 「用心棒」がヒットしたので、その主人公を「日々是平安」ですか、
そこに当てはめた感はどうしても、やっぱりしますね、、。
 なんか血生臭くないというか、ほんわかしているというか、、。
 しかし、邦画史に残る痛快娯楽時代劇であることは間違いなしです。

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評価
☆☆☆☆☆。