king_R  

「ドリームプラン」
監督・レイナルド・マーカス・グリーン
主演・ウィル・スミス

 オスカーは獲ったものの授賞式でえらいことになってしまった
ウィル・スミスですけど、そのことには一切触れずに進めます。

 はっきり言うとね、映画としてはとりわけ商業作品としては
ビミョー。
 悪いけどストーリーテリングは退屈レベル。
 ウィル・スミスの演技もオスカー賞なみの上手さとは思わない。
 エキセントリックに演じるよりやや表現を抑えた感じでブツブツ
言うぐらいでよく居る黒人のおじさんって感じはよく出ていると思ったけど。
 逆に助演ぐらいで奥さんの役をしたアーンジャニュー・エリスのほうが
旦那に愚痴をこぼす時など存在感があったぐらい。
 褒めるとしたら、完全にホワイト・ウォッシュというか
白人目線で作られた黒人女性映画、ドリームよりは
監督さんも黒人ということもあってか5人姉妹の普段の様子とか
前半の黒人地区の悪ガキの感じとかめちゃめちゃ黒人のリアルさが出てたあたりかな。
 
 最初この映画のことを聞いたときは、
テニス界での黒人でしかもアメリカ人であるウィリアムス姉妹を
ハリウッドがほっとくわけがないよなぁ、ぐらいだったんですけど。
 企画としては良いんだけど、これ制作サイドにもうスポーツ・セレブに
なってるからか、理由はわからないんだけど実在のウィリアムズ姉妹が入っている
あたりがエンタメとして停滞した理由かなぁと。
 ハリウッドの実録物とか評伝ものってその人のドラマティックなEpiだけを繋いで作って
お得意分野ではあるんだけど。
 概ね客を引っ張るフックとしてその人の負の側面
もしくはシリアスな葛藤も見ててショッキングだったり
名誉毀損で訴訟にならないのか怖いぐらいかっちり描いてます。
 それが本作には一切ない。
 このリチャードさん、ウィリアムス一家大万々歳の驚異の礼賛映画なのです。
 この辺がエンタメとしてもドラマとしても弱い。
 ラストの試合のシーンですら、ネタバレになるのでか書きませんが、全然ハラハラもしない。
ドラマとしてすごいと思ったのは地元の不良に絡まれるとこと、
ウィル・スミスが語る白人にボコられたEpiぐらい。
 それぐらい、平坦にずーっとドラマが進行していきます。

 ただ、ここでわかって欲しいのが、原題はキングリチャードなんですけど、
ドリームプランと言うぐらいで、このウィル・スミス演じる強烈教育パパは
プラン計画をがっちり立てそれを実行する人なんですね。
 最近、日本でもうまくいかないとプランBとかって言葉が一般化してきましたが
このプランを立てるとかマニュアル化を進めるというのも
アメリカ人の取り組み方の特徴のひとつですよね。
 それで、しかもこのリチャードは本当にプランどうりに
娘二人を育て上げてしまった。
 だから映画としてすーっと平坦な展開になっちゃったという感じ。
 もっとこの強烈教育パパが周囲と揉めまくる場面を酷く(劇中には十分ありますが)
描くのもひとつだったかと。
 そんな無茶苦茶なことばっかりやらせるステージ・ペアレンツ(芸能界なら)
というか教育パパって感じでもないのが映画としても駄目なところ。
 きっちり娘さんのこと思ってるからこそ、娘さんがついてきたともいえるんでしょうけど。
 ただ、プレイヤーとして出資かなにかで制作サイドに入ってて存命どころか現役だと
難しいのかな、、。
 エンタメ作品としては悪いけど、もうひとつ。

 関係記事。
アフター・アース 

スーサイド・スクワッド 

評価
☆☆☆。