映画と感想

簡単な映画評です。シネコンで見ようが、DVDで見ようがTVで見ようが、無慈悲に書いていきます(笑)。

カテゴリ:邦画 > 人間ドラマ

2
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「アルプスの若大将」
監督・古澤憲吾
主演・加山雄三

 ほぼこのブログで映画の製作者は書かないんですけど
この作品だけは特別。
 東宝のどころか日本映画界の大プロデューサー
藤本真澄の名前を記すべきです。

 今邦画を語らせたら一番知識もあって
おもしろいのが、春日太一なんですが。
 この記事はその春日さんからのほぼ受け売りなので
興味がある人は直接春日太一さんのYoutubeに上がってる動画だとか
書籍だとか文章だとかを読んで下さい。
 藤本真澄という伝説のおそらく日本一かな?の戦後ですけど、
プロデューサーが居ます。  
 所属は東宝。日本映画は戦後、東宝、松竹、東映、大映、日活、新東宝とかありましたが
概ねこの順番に大きいです。
 で日本映画界がTVの軍門に下るにつけて
この順番の逆からツブれるというかだめになっていきました。
 その辺は割愛して、、。
 映画制作の勉強のため東宝はアメリカへ行きいわゆるハリウッドスタイルの
プロデューサー主導でPの権限が強く。
 欧州へ行った松竹は監督主導。
 ともちろん例外はたくさんありますがこうなったと簡単には理解されてて
間違いないかと、、。
 その東宝でヒット作も出し会社をお起きもしたし辣腕を振るったのが
この藤本真澄。
 東宝には大きく分けて、これを監督の派閥でわけないところが
東宝のプロデューサー・システムのすごいところですけど、、。
 中でも二人居まして、すごいほうが藤本真澄。
 もう一人が田中友幸です。
 概ねどこの映画会社でも、上映が二本立てとか盆暮れ二回興行
(もうこの辺になるとTVの番組改編期春夏秋冬の
の二時間物のドラマよりちょっと上か、変わらない程度の作品です。)
のヒットシリーズ、プロダクションムーヴィーとも呼ばれたりしますが
 只々お金を稼ぐための毒にも薬にもならない作品を連発し
お金をため、数年に一度とか一年に一度とかにどかーんと
いかにプロデューサーシステムの東宝でも
大きなテーマ性だとか作品性の高い作品を制作するという感じになっております。
 で、この藤本真澄と田中友幸の二人はものすごい犬猿の仲だったとか。
もうバラしちゃいますけど藤本真澄の大ヒットシリーズがこの若大将シリーズで
田中友幸はゴジラです。
 もちろんゴジラで悪い方のヒロインをやった水野久美が前言ってたんですが
一度、とにかく顔だけ出してくれと箱根のホテルのパーティーに呼ばれたところ
それが、藤本真澄系列関係の人脈のパーティだったらしく、田中友幸のゴジラシリーズで
名を馳せてた水野久美はけんもほろろに泣きながら夜中にホテルから飛び出して
タクシーで東京に帰ったことがあるとか、、。
 この二人のPで東宝はカネを稼いでいました。
 
 この藤本真澄作品群の特徴というか、肝になるのが
早い話、日本アメリカ化計画。民主主義バンザイ。
というより日本は負けたほうが良かった?。
 とにかくアメリカの豊かさを真似て享受しようというもの。
 その全てが詰まっているのがこの若大将シリーズなんです。
 
 というような予備知識を得た後に一体どんな感じの
映画なんだ?と興味を持って基礎教養として本作を鑑賞してみました。

 まぁ概ね想像はついていましたが、本当にそのまんま。
藤本真澄がかなり主導して創ったと言われるシリーズだけに
モロその思想性が出てるような、、。
 このネガティブな要素がなくとにかく楽しくて
わーわー言っているうちに終わってしまう映画は一体何だ?。
 ドラマも社会性も問題意識も全くありません。
 青大将だってもてないといういだけでオープンカー乗り回して
めちゃめちゃ楽しそうだし、、。
 当時なんか大学進学率なんてかなり低かっただろうし
高度経済成長や集団就職で東京にやってきた一労働者はどう思って
見てたのか、訊きたいぐらい。
 まぁ夢物語。
 これ日本だとまだ詰め襟着て大学生やってますけど、アメリカの高校生の
お話しをそのまま持ってきた感じですよね。
 で、やたら若大将がギター片手に歌を歌うのもプレスリーの
映画を見ている感じ。
 藤本真澄の考える理想郷がこのフィルムの中に存在している気さえします。
 次回作の予告編が直接組み込まれてるんですけど
次は香港に行くらしい。
 今だと藤本真澄的価値観から逸脱してる気もしますが
当時はまだ英国領ですからね。
 しかも、メキシコ五輪の影響からか取り組む競技が
サッカー。
 全スポーツを若大将にやらせているのかと、、驚きの展開に。

 話は前後しますが、今回は藤本真澄のことばかり書きましたが、
別にこの若大将シリーズを見なくても、
藤本真澄の思想性は完全に補完されてて、
青い山脈なんて完全にアメリカの進歩主義リベラルを謳歌したような
作品だし。
日本でいちばん長い日 1967なんて、戦争末期の
すったもんだを描いてますが敗戦を映画の終わりの目標にした
映画ですから。

関連記事。
椿三十郎 

赤ひげ  

青い山脈
 

日本でいちばん長い日 1967 

評価。
よくよく考えると映画として成立しているのかさえわからない。
☆☆。

4
岸辺  

「岸辺の旅」
監督・黒沢清
主演・深津絵里/浅野忠信

 すごい人だとは聞いていましたが、ただの”食わず嫌い”だけで
私、今回始めて黒沢清作品を見ました。
 評判どうりの凄腕ですね。
 もともとホラー映画上がりで、、ホラーティストな、、なんてよく噂は耳にしてましたが
本作はまさにそう。
 怖くなるとか怖く感じるようにはほぼ演出してませんが、
人物配置とか脚本の構図(画面でなく)そのものがほぼホラー。
 死者とともに色々めぐり続ける旅なのですから、、。

 死者がさまよっているというテーマが基本路線で次々描かれるのですが
最初の小松政夫のEpisodeが典型なのですが、
このパターンだけではないところもミソ。
 生者と死者をめぐるいろんなパターンが劇中描かれていきます。
 だけど最初のEpisodeだけあって小松さんの
切り抜いた花の写真が壁一面にはられているビジュアルは強烈の一言。
 圧巻のイメージです。
 ラストの奥貫薫のエピソードも強烈ですね。
 また、生者に属しながら夫に取り憑かれて呆けたような、
なんと表現したらいいかわからない奥貫薫の悲しげな表情もすごい。
 どうやって説明して演出したのか、、、。
  
 この生と死とは少しずれますが、深津絵里から夫を寝取った
蒼井優の勝ち誇った表情に強烈な印象が残りました。
 なんだ、あの勝者感は、、。
 うまいを通り越して怖いほど。
 つくづく女性は怖いし、
しつこくこのブログで書いていますが女性の方が
なにをやっても感情を表現するという意味ではそれも微妙なのは
上手です。

 最後に主演の深津絵里ですが、この人も若いで出したときから
めちゃめちゃきれいな人だなとは思っていたけど、
 はっきり言って表現そのものは乏しく硬い感じ。
 ベタでわかりやすい演出を好む演出家だと疎まれそうな、、。
 若い時からあんまりキャピキャピもしてなかったし。
 相変わらず、表情とか表現は上記した奥貫薫とか蒼井優の
ほうがあるけど、歳相応というか歳を経るとその抑えた感じが
リアルになってきた人だと思います。

 ホラーとも人間ドラマだとも取れる作品でよくできていると思います。

関係記事。
 永い言い訳 

 ラヂオの時間 

評価。
☆☆☆☆。 

5
wag  

「わが母の記」
監督・原田眞人
主演・役所広司

 めちゃくちゃ良く出来た映画。
 鑑賞前は監督が原田眞人って聞いててちょっとなぁと思っていたんだけど。
 この人私の古い邦画ベスト映画の一つである日本でいちばん長い日 1967をリメイクした人で、
別に人の勝手だけど、あんなに面白い映画を己の手でリメイクして
さらにおもしろくできると思っていることが許せなくてハナから見ていません。
 で、次にきたのが関ヶ原。これはちゃんと見たけど、これめちゃめちゃ駄作。
TVドラマの戦国合戦シーンよりしょぼい合戦シーンつくったら駄目。
 で、私の中ではかなりどころか、もう見ないぞぐらいの評価だったんだけど。

 な、なんと、びっくりこんなすごい映画を先に撮っていたのか、、、。 
   
 作家、井上靖自伝的小説を映画化してるんですが、本当に構成からロケの撮影から演出から
なにからなにまでよく出来ている。
 基本は認知症を扱った母子モノなんだけど、といっても、母親の面倒を主に
見ているのは、長女で井上靖は何年か置きでポツポツですね。
 もちろん、この親子の情愛みたいなのを中心に描いていますが
ここに井上靖の大変複雑な生い立ちが絡んできます。
 これが映画にミステリ的な要素を多分に加えていまして最後まで観客を
引っ張ります。
 母親は子供をしろばんばで出てくるおばあさんに取られたと思っていて、
子供(井上靖-役所広司)の方は母親に捨てられたと思っている。
 冒頭の雨のシーンが男の子からした涙モノでラストまで印象に残ります。
 この親子の思いのズレと真相はラスト、井上靖の妻が船出するバタバタした中で
ちょこっと姑さんから聞いたとか真相を話すんだけど、戦争中だから子供をバラバラに分散したとか
言うんだけど、これがまたちょっと母子の両者の思いからもかなり離れてて、信じられない。
 それに姑さんが息子にも言っていない秘密を赤の他人の
嫁にちょこっと話しただけで信実と真相を語ったとも思えない。
 
 結局、真相と信実は藪の中のまま映画は終わっていきます。
 だけど人間ってそういうものでしょう。
 なまじっかよく知っている家族が一番、人としてわからないものの。
 それに親は親として子に接するし、子供は子供を演じるしで、、。

 また、この映画、二世代、いや井上家の子供たちも入れれば三世代か。
を扱った大家族ものでもあるんだけど。
 これがまた、大量に秘書やら使用人やお弟子さんとか本当に大量に
登場人物が出てくるのにスパーっと頭に入るし、しかも全員を少ない出番でキレイに描き分けてる。
 これを原作があるとは言え、原田眞人一人で構成して脚本まで
書いているんでしょ、すごいとしか言いようがない。

 またロケもすごい。実際の井上靖邸でまで撮ったらしいけど、
1960年代の日本をどうやったらあんな風合いのフィルムになるのか
カメラは門外漢なのでわからないけど、重厚なしあがりは「ゴッドファーザー」のシリーズを
見ているみたい。

 食わず嫌いで見てないけどリメイクの「日本でいちばん長い日」
も阿南さんところの家族を絵が足しているとかいうから
大家族を描いた本作と共通点があるかもしれない。
 ただ岡本喜八監督の日本でいちばん長い日 1967は本当に
前半は会議だけなのに驚異のテンポと緊張感で描ききった名作です。
 岡本喜八も自身で脚本を書くとどんどんオフビートな作品に
なっちゃう人だけど、誰かが(橋本忍)かちっと書いて演出だけすると
無駄は切りまくり、5コマとか3コマの奇数で編集するとか庵野との対談では
言っていました。
 日本でいちばん長い日 1967も監督の岡本喜八は自身二等兵で戦った戦争の終わり方を
庶民目線ゼロで偉い人だけで構成されたこの作品を一番嫌いは映画と言い、
 脚本を書いた橋本忍も会議ばっかりで絶対ヒットしないと思ったと
言っていたそうです。
 
 閑話休題。

 本作は女性からすると結局、
面倒を見るのは女性で、、とか言いたくなるかもしれないけど
なにかすごいことが次々と起こるとかでもないのに面白い
本当によく出来た映画です。 
 
 関係記事。
関ヶ原 

あん  

海街diary


どら平太 

評価
☆☆☆☆☆。

3
seastre  

「海街diary」
監督・是枝裕和
主演・綾瀬はるか/長澤まさみ/夏帆/広瀬すず

 是枝裕和は大ブレイクする前に初期の作品だけど
「ワンダフルライフ」を何気なく見ています。
 変わった映画撮る人だなというのが第一印象。
 だけど、覚えてるってことはやっぱり尖ったところがあってなんとなく印象に残った筈。
 しかし、カトリーヌ・ドヌーヴまで使って映画を撮る
これだけ巨匠になってしまうとは思いもしませんでした。

 この人も、河瀬直美とかといっしょでほぼ私小説というか、
余り大きな資本によらない独立系の映像作家ですよね。
 邦画の場合ほぼハリウッド的なアクション映画は無理なので
どうしても岩井俊二とか河瀬直美とかみたいに演出も画作りも込みでセンスで
勝負ってことになるんだろうけどその代表選手兼トップランナーみたいな気がします。
 実際、作家になりたかったらしいんだけど本当に中間小説なんかを
一冊読んだみたいな感覚を鑑賞後に得ます。

 ただ本作は、自分で全部製作まで兼ねて資金集めをしたというより
実際のところは知りませんが、有名原作にオールスターキャストと
いった感じで大手資本実際は製作委員会でしょうけど
そちらに自分自身のほうを合わせたって感じがします。
 キューブリックが予算だけはふんだんに使えたけど
大手スタジオに合わせた「スパルタカス」みたいな感じ。
 コンプリは出来てないし、あんまり合わない作品もあるんだけれど、
だいぶ大手資本に配慮して創ったなぁって気がします。

 原作の漫画は全然知りませんが、はっきり言うと4人もの女性を
きっちり描くって男性の監督からするとめちゃくちゃ難しい気がします。
本作でも、3女の夏帆の役がもう一つうまく描けていないような、、。
 細雪も女性から見てどうだかわからないけど「阿修羅のごとく」なんか
絶対男にはわからないしあんな作品を書けない。

 腹違いの姉妹が一つ屋根の下でって設定はこれを
もっと過激にしたらバラバラの人間たちが擬似家族を形成していた
「万引き家族」になると思う。
 人はそれぞれに違ってそれで良くて、努力さえすれば、
完全ではないかもしらないけどわかりあえるところまでいけるって
ことを描いている。
 血の繋がりとか関係ないかもしれない。
 それと不倫や間違い誤りなんかがあっても生きていくことの
重要さ優しさなんかも描いていると思う。
 
 是枝裕和って歴代の子役の演出が最強にうまい人だけど
広瀬すずへの自然な演出も良い。

 ただ、私的にはもうちょっと過激な是枝作品のほうが好き。

関係記事
あん 

評価
☆☆☆。

5
qwu 

「キューポラのある街」
監督・浦山桐郎
主演・吉永小百合

 日本映画史のベストランキングなどでよく載っていますが、
そのとおりの傑作。
  
 文芸的だったり左翼的だったりするとは思っていたけど、
こんなにエンタメ度が高い作品だとは思わなかった。
 あと、日活だということにも驚き!。
 こんな作品も撮っていたんだ、と。
 高度経済成長期や所得倍増とかいうものの、、。
 まだまだ貧しい日本人。それも東京の郊外の埼玉県川口市。
 鋳物工場が立ち並ぶとナレでいうから、工業地帯なんですね。
 そこの中小工場、中小企業の職人さんの一家の話。
 トントン話が進むし、平凡な毎日を退屈に生きている
というものの、同じ一日は決して無い。
 そんな感じです。

 とにかく、どこでロケしたのかしりませんが、(実際埼玉県川口市らしい)
モノクロの暗い感じとキューポラというと、戦車を思い出してしまうのですが、
煙突から出る黒い煙と相まって環境が良いとはいえない。
 それにこの貧しさがめちゃめちゃリアル。貧しいといっても、
TVがある家にはあるし、やってけないわけではない。
 脇には芸達者な役者さんが揃っていますが、この監督さん、
とにかく子供への演出がめちゃめちゃうまいですね、、。
 あと子供そのものの描き方が。特に男の子ね。
 女子はやっぱり性の壁があるせいか、どの子も男の子からみた
女子生徒って感じですけど。
 元々児童文学か今で言うYA本みたいなのが原作だったらしいし、
 それと、一番ネックなのは、このあと、大スターになることを
知っているからかはわかりませんが、
 吉永小百合が中学生に見えない。脇の友達の娘は見えるんですけど、、。
 美人の超元気なド天然の娘って感じには見えますが、、、。
 ネックはそれぐらいですかね。

 こんなエンタメ度に満ちた映画とは全然思いませんでした。

 北朝鮮への帰国運動も描かれているのが、
リアルというべきか、イデオロギーの対立があったとか、
当時は今よりだいぶ左よりだったと理解すべきか
本当に悩みますけど、、、。

 ただ高度経済成長期を豊かな中間層があって全員を正社員にして
とか、この映画を見る限り嘘ですね。
 貧しい人は貧しいし。
 ちょっと暗い気分にはさせられましたが、、、。

関係記事。
伊豆の踊り子 1963 

用心棒

七人の侍 

赤ひげ 

ゴジラ 1654

評価
☆☆☆☆☆。

3
earl 

「早春」
監督・小津安二郎
主演・池部良/淡島千景/岸恵子

 前のお茶漬けの味のときは、こんななにもおこらない話を
よく映画にしたもんだと、書きましたが
一連の地味なお話し中心の小津作品の中では、
 一番話し的にシリアスかも。

 よく見ると住宅地は舗装されていなかったりと貧しそうに
見える時代ですが、高度経済成長期を迎えているのか
もう通勤ラッシュと所謂東京のかなり離れたベッドタウンから
の長距離通勤の時代が訪れています。
 その通勤仲間であるグループ交際していたはずの池部良さんと岸恵子さんが
不倫関係に陥り、池部良さんの奥さんである
淡島千景さんとの関係がぎくしゃく、しかし、転勤話しを期に夫婦関係の再生
を試みるというのがざっとした筋立て。

 今の時代だと、通勤圏はかなり広がっていますか、
社会の中での孤立化が進んでいるせいか同じ駅を利用する人々
で男女のグループ交際はちょっと考えられません。
 まぁ昭和の時代性とでもいいますか、小津さん的価値観といっても
いいのでは??。

 映画に関しては、いつもの小津節。
もう再三再四このブログの記事で言及しているので
簡単に書きますが、
1)
 画面ならびにカメラはほとんど、フィックスで固定。
2)
 カメラの位置は低い、日本家屋での人の座った目線の高さ。
3)
 とにかく全員、ほぼ抑揚のない棒読み。
4)
 会話のシーンでのカメラを正面に据えた単独の語りの切り返しの編集。

 この辺を抑えといてください。試験に出ます。

 小津さんと言えば、短い作品が多いのですが、この早春は長い。
そして、他の作品に比べると、枝葉とは言えなくもないですが、
若干全エピソード的に冗長な感じ。
 少々無駄が多い感じがします。他の小津作品が切り詰めて編集されている
からかもしれませんが、、、、。

 今回は実際に不倫関係になるということで、
今までの穏やかな家庭の小さな波風程度でなく、問題としてはめちゃめちゃ
大きくシリアスです。
 逆にラストよくこんな程度で収まったなぁという程度。

 しかしまぁ、男目線だからでしょうが、抑揚のない棒読み、
と言えども、奥さんの淡島千景さんが池部良さんを問い詰めるときの
怖いこと、怖いこと。
 あれ、ちょっと気の弱いというか、自信がないと白状してしまいそう。
 池部良さんもよく頑張ったと悪いことしてて頑張ったはないですが、
 あの時点で隠し通したな、、と。 
 
 今回は、池部良さんに付いてちょっと書こうと思うのですが、
この人、二枚目で出てきた割には、ちょっと怖いというか、
冷酷な感じをもっていますよね、、。
 クールで知的な感じと言えば、よく言ったほうで、
再放送で東宝関係の製作なのかな詳しくはしりませんが、
 加山雄三主演でやってた江戸の旋風という同心ものでも、
かなり異色の半分敵みたいな同心の役でした。
 それも、歳を重ねるごとにそんな面が出てきたような、、。

 結局、又同じことを書いてしまいますが、
これで解決したわけでなく、お互いわだかまりを抱えつつ年月を
重ねて、人間関係を深めていくのが、夫婦だったり家族だと
思います。
 それに、転勤後でやり直しかけたところで映画は終わってますし。
 うまく再生するとは描いていません。

 割とシリアスな事がおきて話が転がりそうで、
長く感じるということは、小津作品としては出来が
もう一つかもしれません。

関係記事。
青い山脈1949

浮草

麦秋

晩春

お茶漬けの味

評価
☆☆☆マイナスぐらい。

2
batt 

「けんかえれじい」
監督・鈴木清順
主演・高橋英樹

 音に伝わりし名作だけど、うーんどうなんだろう?。
これ、原作が昭和の超有名自伝的?小説で、かつ脚本も
新藤兼人。現在、ドラマ版の座頭市物語のシーズン的には2に
なるのかな?新・座頭市物語をやっているんだけど、
(一個目のシリーズは本当に神シリーズです)
 時々脚本で新藤兼人さんの名前を見るんですね、、、。

 まぁそれは置いといて、これ相当現場で監督の鈴木清順が
脚本を撮りながら変えちゃったらしい。
 私が物覚えが付いたころではもう鈴木清順といえば
見た目は穏やかな好々爺だけど作風は子供ながらに見てて
なんじゃこりゃの人だったんですけど、
 そうとう元の新藤さんの脚本をアバンギャルドに変えてるはず。
 撮影中も主演の高橋英樹さんも訳がわからないまま
演じてたっていうから納得なんだけど、、。
 おそらく、この作品を鑑賞するなら、
ba
ba2

 この小説を純粋に読むほうが一番楽しめると
読めてませんが思います。
 鈴木さんの過激する演出でぐちゃぐちゃになってて
このぶっ飛び感を楽しむんだよと言われても、、
 ちょっと悪いけど、楽しむところまで行けない。

 だけど、本来、こういった不良ものというか
実際は戦前の旧制の学校システムだと旧制中学生って
もうエリート予備軍で不良じゃないんですけどね、、。
今でいうと高校生なんだけど、旧制高校が今の帝大のもうなくなっちゃったけど
一二年生の教養学部の扱い。
 旧制高校からはほぼ無試験で旧帝大に入っていました。
 この辺、早坂暁のダウンタウン・ヒーローズ」で描かれてました。
 で帝大行った人がそのまんま教授なったり官僚になっていたので
超スーパー・エリートです。
 と、そこをさらっと指摘しておいて、昭和のはじめは軍国主義とかいわれるけど、
実はめちゃめちゃアナーキーでデカダンスだったって
尊敬する天本英世さんも
言っていたのでそこにバンカラな風合いも足せば分からなくも
ないけど、どこか感情移入出来ず楽しめなかったです。

 本当は、私ノワールものもめっちゃ好きだし、
どこの番長とどこの番長が殴り合って、どっちが勝ったとか
殴られるのは嫌だけど、学生時代も話きく分には好きなんだけど
 これだったら、井筒和幸が撮ってきた不良映画のほうが
めっちゃ面白いと思う。

 だけど、喧嘩ものって加減が難しいですよね。
究極、殺しちゃうとこまでいく可能性もあるし、
怪我で不可逆の状態までいっちゃうなんてお話しやドラマで
いくらでもありますから、なんかリアルなようでリアルじゃない戦い
のような気がするんですよ。
 こういうこと各時点で喧嘩慣れしてないのがバレてると思いますが、、、。

 この映画ね、青い山脈1949 前編じゃありませんが、
ものすごいところで終わります。
 ここから先のほうが、実は時代性も含めて、シリアスさも
増すし、社会性も入るしで急激に面白くなりそうなんだけど、
鈴木清順は続編の脚本を書いたそうですが、製作はされず。

 押井さんもよく言ってたけど、みんなで作っていく商業映画
一人だけ、めちゃめちゃやって自己満足しても絶対うまく行かない例かも
しれない。
 原作の良さと鈴木清順のはちゃめちゃ感でギリギリ持っている感じで
日本映画史に残る映画でしょうが、
 よく分からなかったというのが正直なところ。

関係作品。
伊豆の踊子1963 

評価
☆☆。

3
otya 

「お茶漬けの味」
監督・小津安二郎
主演・佐分利信/木暮実千代

 主演が原節子さんでも笠智衆さんでもないので、
ちょっと変化球の小津作品かと思っていたら、安定のいつもの小津作品でした。
 というより、小津作品、ど真ん中といってもいい。
 主演の佐分利信、木暮実千代のコンビが少し珍しいぐらいですかね?。
 いつも、冷静で余裕の夫、佐分利信さんに夫婦倦怠期でつんつんなってる
気の強めで独立心が強い奥さん木暮実千代。
 この夫婦がちょっともめて、勝手に遠出して出ていった奥さんが
帰ってくるだけ、というだけのよくもこんな企画が映画に成ったなと
いいたいぐらいの地味な話。
 しかし、そこは小津マジックなのか、スルスル退屈せずに見れてしまう。
 不思議、不思議。
 ただし、脇のというかその他のキャストは小津さんの人徳か、
はちゃめちゃ豪華。淡島千景さんに、鶴田浩二さんに、七人の侍の津島恵子さん。
 こうやって見ると、鶴田浩二さんってめっちゃ若いんですね、。
 もっと年上のイメージをもっていましたが、、、。
 佐分利信さんが老け顔で実年齢が謎の訳者さんなんですよね。
 木暮実千代さんは日本映画でも、VAMPといいますか、所謂妖艶な役柄が
多い女優。商売女とか、芸者さんとかその業態職種はどうあれ、良妻賢母と
いうより自立している女性役が多いです。そんな肉感的な人ではありませんが、
顔が多少濃いかな、、。
 それが主婦の役をやるというのも見どころの一つ、
が、やっぱりいい奥さんでは決してない。
 ただ、Wikiだと実生活では夫婦円満のめちゃめちゃ良妻賢母だったそうですが、、。

 
 小津ティストは相変わらずですね。カメラは低い。
 これ、前も書いたかもしれませんが、日本家屋で座ったときの視線なんですね。
 究極に普通めっちゃ多いバストショットがあんまりない。
 カメラはほぼ移動せずフィックス。会話のシーンもこの映画は割と少ないかなと
思いますが、セリフごとにバチバチ切ってカメラ対面で一人だけで演技させ
編集でつないでいます。普通、音だけは二人で会話したのを使うとか
ツーカメで背中から取るのに、これだけはどうしてこのへんてこりんなスタイルを
小津さんが好むのか謎。
 そして、どのキャストも、よく笠智衆さんのことを
いいますが、どのキャストも、セリフは超平坦棒読み。
 逆にプロの俳優さんに棒読みを演出するってどうやっての?って感じ。
 普通、これだけの特徴があると下手な学園祭とかの素人ヴィデオや
映画に見えるのに小津さん特有の味にまで昇華させているのは
プロの技なのか、、。

 この夫婦、佐分利信さんでどうにか持っている気もしますが、
それって男性目線でしょうか?。
 夫婦もそうだと思いますが、長く付き合っているカップルや家族も
ここから、ぱっつり完全に仲直りするって実はないんですよね。

関係記事。
七人の侍

青い山脈 1949 前篇 

浮草 

麦秋 

晩春 

獄門島 

評価 本当は4かなと思いますが、若い人は退屈かも。
☆☆☆。

 そんな感じもこの夫婦仲に出ている気がしました。
 


4
sun 

「息子」
監督・山田洋次
主演・三國連太郎

 またまた更新が滞ってすいません。
 シネコンにいけない症候群も再発して古い映画が続きますが
どうかご勘弁を、、。
 一言感想、兎に角、いい映画。

 これ1991年制作なんですね。丁度バブルが崩壊か絶頂のぐらいで、
東京でフラフラしてる永瀬もそこそこ暮らしていける。
 このあともろロスジェネの世代で大変なことになるかもしれませんが、
という時代背景を踏まえつつでも、
 もう既に顕在化している、独居老人の孤独死の問題なんかもきっちり
山田洋次は捉えていて先を見る目あるなぁとか、自然と考えてしまう。
 また良い所に就職してそうな長男のマンションもめっちゃ狭くて
しかも通勤時間が長そうで、山田洋次の目線の低さに感動します。

 三國さんも60~70年代は完全な悪役でしたが、
女優さんが怯えて演技できなかったというリアルEpiがあるほど。
 もう釣りバカ日誌も渦中なのかな、好々爺を素晴らしい演技力で
演じています。
 息子とはもちろん次男の永瀬のことで、この人、あんでも
完全な"引き"芸だったのだけど、この作品でもリアルな感じで引いてていい。

 素晴らしいのは、この映画の演技で賞を受賞したそうですが、
聾唖の薄幸の女性を演じた和久井映見。
 同性の人はわからないかもしれないし、女性から見ると
もう一つもう一線越えた女性としてのリアリティがないかもしれないけど
笑顔が健気でかわいい。
 男性だと、誰でも好感を持つと思う。

 人間って魔が差したり、悪い方向に変わってしまうこともあるけど、
その真逆でいい方向に変わることだってあります。
 別に元ヤンキーのドキュメンタリーを見なくても、回りにそんな人が
たくさんいるでしょう。逆も居ると思いますが、、、。
 そんな希望をほんわか見せてくれる作品です。
 逆に長男家族が可愛そうにさえ思えてしまう。

 ただ、この山田洋次の路線って吉岡が出演していた
遥かなる山の呼び声でも感じたんだけど、倉本聰と作風似てますよね。
 左翼とは思わないけど、視線がいつも低く厳しいようで優しい。

 すごいいい映画だけど、これ家庭内の人間関係に拘るのは
わかるけど、二時間ぐらいのドラマとどう違うのって気はする。
 丁度、センスで勝負するしか無い日本映画の象徴かもしれないけど。

関係記事
遥かなる山の呼び声 

武士の一分 

隠し剣 鬼の爪 

あん 

評価
おまけで4つかな。
☆☆☆☆。

5
long 

「はるかなる山の呼び声」
監督・山田洋次
主演・高倉健
 
 これ、まんま西部劇じゃんということでつい今、見てみました。
ググると「家族」「故郷」の民子三部作の最後の作品だとかですが、
 まぁ苦労している女の人です。

 牛飼いとセリフ中で言っていますが、西部劇がすべてランチだったり
牧場なので、これまんま西部劇です。
 拳銃と撃ち合いがないぐらい。
 報復にきたハナ肇との喧嘩があるのが不思議なくらい
何も起こらない映画ですが、いい映画ですね。
 ラストで大きくハナ肇は嫌なキャラから男を上げますが、、。
 警察に追われている男と紹介されていたので、もっとサスペンスフルな
展開かと思っていましたが、ほぼサスペンスフルな要素ゼロ。
 もっと伏線とか前半でチラッと凶状持ちなのを描いてもいいかなと
エンタメ路線が大好きな私は思いますが、、、。

 これ舞台をとにかく牧場にしなければもうちょっと変わったかな
ティストになったかなとも思いますが、タイトルでさえ
名作シェーンの主題歌から取っているとあっては
意図して西部劇に寄せていますね。
 相変わらず、悪い意味でなく、宮崎駿と同じ労働賛歌的な
黙々と働くことへの賛歌と地道にまっとうに生きることと
そんな人の素晴らしさが表現されています。
 この二人、いい意味でのやはり潜在的戦後左翼表現者なのです。

 ほぼ自首といってもいいぐらいの逮捕で
ここも、もう少しドラマを付け加えて煽ればとか思いますが、
あのラストだとあれで、いい。
 ラストがまた、めっちゃいい。
 エンタメ路線を捨ててまで人間ドラマしかも家庭ドラマに拘泥する
山田洋次の真骨頂がでています。

 はっきり言って、寅さんのシリーズより圧倒的にこっちが好き。

 関係記事。
武士の一分 

隠し剣 鬼の爪 

評価
☆☆☆☆☆

5
166828_01 

「あん」
監督・河瀨直美
主演・樹木希林

 一言、名作!!。最近、涙もろくなってんのかな、。
 涙ぽろり、泣きました。

 前映画で、泣いたの何時ぶりだろう、、。
ちょっと、ブログチェキいれたら、
この世界の片隅にでした。
 だけど本作、めっちゃいい映画です。
  
 これ、どれくらい、原作のドリアン助川さんの小説と
変えてあって、合致しているのか、わかりませんが、、。
なんか、原作は、読書感想文のコンクールの表題作になっているほどの
作品らしい。
 一応、映画onlyで書いていきます。
  
 あのね、、河瀨直美はね、デビューしたころから、
かっちり追いかけてるというか、そんなにコンプリ目指している感じでもないんだけど、
なんか気になる映像作家でして、なんだろう、めっちゃ同時代性を感じるんですね。
世代も、ちょっとお姉ちゃんぐらいな感じで、、。
 エポックメイキングだったのは、「萌の朱雀」かな、、。
 まぁ、日本映画って予算の問題があって、この頃なんて、本当に
日本映画って全敗時期だったんですよ、
 今でこそ、アニメの製作委員会方式とったり、テレビ局がメインになったりで
本数こそ、以上に増えてきたけど、でも、まだ、負けてるけど、。
 製作委員会方式も、これ、アニメ映画程度のお金なら実写でも集められますよ
というか、そのアニメの予算で実写お願いしますみたいな、
 ある意味、最初からの負け戦ですよね。
 結局映画ってアニメと違って、企画で予算が変わってくるし、予算がそのまんま
画に出る、媒体なんで、どうしようもない所あるんでしょうが、
 結局、日本映画って、センスで勝負か、日常ドラマで、みたいな感じになっちゃう。
そこに、現れたのが、私に言わせると、河瀨直美と岩井俊二なんですよ。
 まぁ、どちらも、センスで勝負みたいな人だけど、他の作家とは違いましたね。

 河瀨さんって本当は、自身のおばあちゃん撮ったドキュメント上がりの人で、
この「萌の朱雀」だって、ある意味、ドキュメント、プロの俳優さんって國村隼
だけで、実は、ここで、尾野真千子がデビューしてるんだけど、
他の出演者みんな、ド素人です。それを、どうやって、演出してるのか、知りませんが、
なんか、めっちゃリアルな、演技させて、ある意味、演技じゃない。
 作品にしちゃう。
 多分、そういう、演出方法が私、好きななのかもしれない。
丁度、チャン・イーモウのあの子を探してみたいな感じ。
 いや、黒澤さんみたいな、礫投げたり、顔中ドーラン塗ったり、書いたりして
超わかりやすい、ベタな演出も好きなんだけど、、。
 本作でも、千ちゃんのどら焼き屋にやってくる、女子中学生三人組の
会話のリアルさって、すごいでしょ、、。
WS000000


 実は岩井俊二も、もうどれか、忘れたけど、お姉ちゃんと子供が
お風呂入る時に、ヨーイドンって言って、服脱ぐ、競争するシーンがあって
子供って、競争するの、大好きでしょ。
 黒澤さんも、実は、東映に単身乗り込んだ「トラトラトラ」で
こういうのやりたかったそうだけど、各種諸問題で出来ませんでした。
 淀長さんによると、アメリカから来た、プロデューサーが二流の
人で、アメリカのスタジオからすると、黒澤さんとは、いえ、
完全になめられてたらしいですね。
 淀長は、Pの名前を聞いただけで、あぁ、この映画ダメだって思ったらしいです。
 それに、黒澤さんのほうでも、問題があって、天皇って言われてた人で、
ゼロ・コンプロマイズドなんですよ、、家は潰すし、雲待ち天気待ちでしょ、、。
 つながらないとか、わかりますが、雲が駄目とか、無理だから。
 リアルを目指すと、最終的には、こうなると思う
 尾野真千子って、今でこそ、大女優だけど、「萌の朱雀」だと、
あの三人組か、少なくとも、内田伽羅ぐらいのあつかいでした。
「萌の朱雀」のあと、そのまんまの勢いでに東京乗り込んでいって、  
 しばらく、東京で仕事なくて、大変だったらしいけど、、、、。
 こんな風に、人生変えてしまうから、あんまり素人登用するのは、
どうかとも、思いますが、、。
 
 んでね、河瀨直美をコンプリしてないから、ちょっと語りづらいんだけど、
前見たのが、だいぶ前で、その尾野真千子が出てる「殯の森」で、
介護とか、ケアハウスの認知症の問題を扱ってました。
 ただ、映画としては、大分ラスト混乱してて、
宮﨑駿の「もののけ姫」みたいな感じで、
河瀨直美をもってしても具体的な解答がないんだな、とか、
河瀨直美ももう、終わったかなとか、思ってました。
 で、今作は、ハンセン病でしょ、、。相変わらず、突き詰めてハードなものを選ぶな、、と
思ってたけど、こんないい映画だとは、。

 徳江さんの素性がバレて、なんか、街中で、すごい騒動になるのか、
と思いきや、単純にお客さんが、急にパターっと誰も来なくなるって、
展開も、リアルすぎて、好き。
 世間ってそんなものですよ、。あそこを、過剰に煽らないところも
いいですね、、、。
 
 徳江さんの堕胎の話と、千ちゃんが絡んでくるところは、作りすぎてる部分も
あるけど、あの二人、親子なんですね。
 千ちゃんに悲しい目をしてるっていうところなんかで泣いたもん。
悲しい目だけど、最近、書き出したら止まらないので、自粛してるけど、
「ゲムスロS7E6」でも、トアマンドが、ハウンドに、お前、意地悪な犬って言われてたらしいけど、
悲しい目してるぞ、って言うシーンがあってね、、。
 悲しい目してる人に悪い人は居ません。
 みんな傷ついています。

 ラストのラストも、本当に良かった。
 多分、千ちゃん、店も出ちゃったんですね、お好み焼きと折半にされたりして、
 そして、屋台になっちゃったけど、呼び込みまでして、そこで、エンドロールが始まって、
一個売れる所を、音声のみの、画面offにしてるところなんて、
 もう一回、泣きましたよ、、、、、。

 とにかく、見てほしい映画!!。
 いや、見ろ!。
 河瀨直美、万歳!!。

評価、
☆☆☆☆☆。

5
uki 

「浮草」
監督・小津安二郎
主演・二代目中村鴈治郎/京マチ子

 一言、めっちゃ面白い。

 ほとんど、話的にはなにもおこらないのに、
微妙な人間関係だけで、二時間ずーっと飽きせずに魅せるのは、
脚本の技!?。
 田舎町に旅回りの大衆演劇の劇団が来るだけなのに、
話と興味がどんどん続いていくという、、。
 なんじゃこりゃ。
 
 これ、小津さんのセルフカバーだそうですね。
 まぁ、小津さんの演出力というよりは、役者さん、スタッフの
総力戦ですかね、、。
 中村雁治郎さんの関西弁がサイコー。
 後他の、いかにも堅気でない、ヤクザそうな、劇団員もいいし。
 床屋のかわいい娘さんにちょっかいだしかけたてら、ぱっと母親に
変わられて、次のシーンでは、頬を切られてて、
「いかれましてん」って、大爆笑。
 土砂降りの中での、京マチ子さんと中村さんとの
口喧嘩のシーンなんてサイコーですね、、。
 これ、カメラ、宮川一郎さんで、いつもの、
小津演出の低いカメラ位置は、ちょっと高いですが、
なにか、両脇に物が置いてあって、対象物を置くに捉えて
奥行きや、距離感、覗いている感じを出すのは、一品ですね。
 あと、カラー作品の初期をいうこともあるのですが、
これは、ちょっとやりすぎて、あざとさまで感じますが
 画面に赤いものを一つ、ちょこんと目立つように置くという
のも宮川さんの好みの一つです。
 赤い花に、傘、かき氷(違うか、ゼリーのお菓子)

 ただ、小津さんの好みのカメラワークと演出は、
そのまんま。
 相変わらず、四角い(どの映画も四角いのですが、とりわけ小津さんのはそう感じる)。
カメラはうごかない。会話のシーンは、前の記事でさんざん書きましたが、
真っ正面で、役者を一人で喋らせ、それを撮って、つなぐ。
 これが会話して、音声だけ流して撮ってもいいのに、変な間に
なって編集されてて独特の、間をもたらせてます。
 もう小津さんの味になっています。

 私、基本、やっぱりドラマがあって、オーバーディレクションの
ハリウッドスタイルとか、黒澤さんのスタイルのほうが、
好みなんですが、
 この小津マジックにはやられてしまいますね、、、。

 後、この作品は、旅役者が田舎に回ってきた、
 小津さんの原体験なんでしょうね。

 若い人は、ひょっとすると退屈するかもしれないけど、
マジでいい作品です。 
 婚期の遅れた娘と父親の出てこない、
小津さんのエンタメ路線での一つの到達点。

 関係記事。
「麦秋」

「わが青春に悔なし」

「晩春」  

評価
☆☆☆☆☆。
こんなに何もおこらなくて、話を語るテクを教えてほしい。

4
ba 

「麦秋」
監督・小津安二郎
主演・原節子

 以前、「晩春」の記事で、小津さんは下手だ。
って書きましたが、
 本作を見て、ちょっと訂正。というか
 
 ちょっと、見直しました。あいかわらす、カメラは低いし、
めっちゃ四角く撮ってます。と言っても、誰がとっても画面は四角ですが、
小津さんの場合、会話のシーンで真正面でバストショットで
ぱっちんぱっちんFIXで撮るので、漫画のコマだと
真四角みたいな気がするのです。
 相変わらず、カメラはほとんど動きませんが。

 今回は、「晩春」ほど、イマジナリーラインを越えた、
向かいあいの切り返しカットがあんまり気にならなかったです。
(私の体調が原因かな)
 というより、この、なんにもほとんど起こらない、脚本で
最後まで、観客の興味を引っ張っていく
脚本の力に脱帽。
 本当に、最初から最後までなんにも起こらない脚本なんですよ、、。
 最後に、のりちゃん(原節子)の結婚相手が決まるだけ、、。

 だのに、見続けられるこの演出力は、なんだ、、!。
また、感情的になったり、憎み合ったり、する人物も皆無。
大人がずーっとやっていっているだけ。
ドラマ性ゼロじゃない。
 それで、見続けられるって、これ、傑作かもしれない。

 原節子さんもいいけど、友人役の淡島千景さんや義姉役の
三宅邦子さんもいいですね、、。

 最後に、まとめ的に、少しだけ、
原さんって、晩年、老け役で登場せず、またマスコミにも
一切でなかったことでも有名。
 この企画の前は、短期間だけ活躍した女優さん的なイメージを
持っていたのですが、よく調べてみると、
 15歳で戦前にデビューし、最後は、忠臣蔵で40歳代ですか、、。
 ある意味、映画onlyで全力で駆け抜けた女優人生だったかもしれませんね。
やりきったぐらいの感覚はあったでしょう。
 さすがに、最後の40代の作品は容色は衰えた感がありますが
 この小津さんとの婚期を逃しつつあるハイミスの女性が
最後、思わぬ大逆転で美しすぎる花嫁姿を魅せて嫁いでいく
作品群がキャリアのベストかもしれませんね。

そんなことを思いました。

関係記事

「わが青春に悔なし」

「山の音」

「青い山脈 1949」

でも、星的には、
☆☆☆☆1/2ぐらい。
 
  




3
iii291 

「青い山脈」
監督・今井正
主演・原節子

 途中T2の記事を挟んでしまったけど
原節子、主演シリーズに戻ります。
  
 すごい作品ですね、、というか、企画、5度も映画化されてます。
 撮り方にもよると思いますが、この作品が一番原節子さんが
美しく撮れているように思いました。
 というのも、ずるいですね、、。木暮実千代さんは別にして
他の女子高生は照明のあてかたか、メイクの仕方は
しりませんが、原さんとの肌の色の白さがぜんぜん違う、、。
 また、NHKも酷だ、。 
 知らなかったけど、ものすごいところでこの映画終わるんですよ
と思ったら、前後編の二本立てだった。
 是非、後編も放送して欲しい。
 というか、竜崎一郎さんが反対波にボコボコにされるところで
終わるんですが、あんなところで、終えられたら、
 誰だって、続編見に行くでしょ、、。ズルすぎ。

 また、主題歌が国民唱歌みたいになっていますが、
劇中で流れるテンポと私の知っているテンポが全然違う。
 ライブを重ねるうちにテンポが上がっていくのは、
ロックや、HR、HMと同じで、世界的普遍事項らしい。
 
 波乱を巻き起こす女は、杉葉子で、順番がテレコになってしまったけど、
本作で、杉葉子はデビューだったそうな、、。
 こりゃ、印象に残るな、、、。スターなりますよ、、。

 また、現在のアニメ、オタクでもキャラ立ての一つの道具に
なっている"ドジっ娘"ですが、もうすでに、本作で登場。
 リボンを付け、眼鏡っ娘の若山セツ子だ。
 いくら先生がいるとはいえ、
寝てしまうなんて、杉葉子より、油断し過ぎで、破廉恥で問題行動だろう!!。
 なんか、あのテーマ曲を劇伴にして自転車を乗るシーンだけが、
刷り込まれているけど、前編では一切そんなシーンない。
 竜崎一郎のほうが、自転車乗ってる。
 進歩の象徴だったのかな、、、。
 
 男女交際ぐらいで、学校の名誉とか、いうのはすこし古い気もするけど、
 あんな感じで、クラスでわーわー言って揉めたり、街中のうわさなったりという
ワイドショー的ドミノ倒しタイプの展開は、よくわかるし、おもしろい。

 とにかく、女教師として美しすぎる。

 でも、映画的には、そんなに大した作品で班ないと思う、、。

関係記事
「わが青春に悔なし」

「山の音」

☆☆☆1/2ぐらいかな。要するに映画的には普通でした。 

4
wa 

「わが青春に悔いなし」
監督・黒澤明
主演・原節子

 黒澤作品ということで、一番楽しみにしていた作品。

 GHQ推奨の民主化作品ということで、敗戦後の翌年に制作されています。
 あんまり政治的なことを書くのは、好きではないのですが、
GHQが絡んでいるということもあり、この時期にこれだけ、コロっと
態勢が変わった映画をよく作るなぁ、、と呆れるほど、、。
 戦時中がいかに悪くて、戦争が終わっていかに人々がのびのび
生活できるようになったかを実際の事件になぞらえて描かれています。
 初期の黒澤作品とは言え、カメラの中井朝一とか
主要スタッフはもうほぼ揃っている感じ。
  
 原さんですが、正直、この人、目と鼻が大きくてカメラとフィルムの
性能のよくなかったころの女優さんだなというのが、第一印象。
 美人ではあるけれど、そんなに飛び抜けた感じじゃないな、、と思っていたのですが。
 しかし、どこか、その大きな造作の顔とは裏腹の控えめで質素な
キャラが演技などからにじみ出てくるようです。
 小津さんとの作品が有名ですが、黒澤さんとは、この作品と
「白痴」でタッグ。

 ただ、他の監督さんの作品に比べ、黒澤色が映画後半に出まくっています。
 近所中を敵に回して、田んぼで泥だらけで作業する壮烈なシーンが続くのですが、
 原さんが泥だらけになっているだけで、心と身がが締め付けられるようです。
 画面に勢いや、動きをつけることが好きな黒澤ティストがもうすでに出ています。
 前半の穏やかな学生生活が遠い昔に思えるほどの
後半の田舎での壮絶なシークエンスとなります。
 
 男優には厳しかった黒澤さんですが、女優には、演技指導が甘く、
もっと厳しくやってほしいと女優から懇願されたりしていたとか、、。
 その証拠というか、女優はあんまりこだわりがないというか、
コロコロ変えているでしょ、、。
 
 ただ、言っちゃいけないこととは思いますが、
この敗戦後のこの時期にこうも時流に合わせておもねった作品を作るのは、
 ズルい気がします。

関係記事
「赤ひげ」

「七人の侍」

☆☆☆☆
 
 
 
 

2
he 「

「変態だ」
 監督・安齋肇
主演・前野健太

  これ、監督は安齋さんですが、企画、脚本ともに
みうらじゅんさん。
 そう、みうらじゅん、安齋肇コンビによる映画なのです。

 安齋さんはちょっと違った才能の持ち主ですが、
みうらじゅんさんは、正しく異能の人といいますか、
日常のニッチなところに面白さをみつけ、また、その駄目っぷりを
自分のダメさも加味して、上手くプレゼンするという稀有な才能の
持ち主でして、
 タレントとしてもですが、マルチ・クリエイターとして
高く評価しています。
 「見仏記」コンビこそ違いますが、
などある意味、アカデミズムを内包していて、
プレゼン能力といいますか、表現というか、
その例えがすごい、仏像をみてブルック・シールズを僕は見ますと、、。
 また、ゆるキャラもみうらさんの考案&ネーミングで
これだけありとあらゆる公的機関から私的機関の各部署、各商品にいたるまで、
人に伝える媒体としてキャラを持ち出した言う点では、
 社会をも変えた人とも言えると思います。

 閑話休題。

 映画って実は、テレビ以上に狭いターゲットを狙える
表現商品です。興行的になりたつのって、
ペイテレビの各媒体へおろしソフト化の二次惨事収入まで含めると、
どのへんなのか、正確な数字を知りませんが、
 ドキュメンタリー映画なんかも今でもあるミニシアターで
やっているのをみるとけっこう勝負になるらしい。
 ある意味、映画なんていう媒体も
みうらじゅんさんの得意分野かもしれない、、。

 そう思い見てみました、、。

 ただ、同じシネコンの建物で「ファンタスティック・ビースト」と
「ローグワン」を演っている中で同一料金なのはちょっと厳しかった。
 まぁ、これ後付ではないのですが、
これ、ある意味、自虐ネタなんだと思います。
 その駄目な部分をさらけ出して、笑ってくれよと、、。
 で、それが表現としてエンタメになっているかというと、
そこが唯一クリア出来ていなかったと、思います。
 自虐ネタって痛さがどのへんから客観的に笑えるか
がネタになる勝負のポイントだと思いますが、
 痛さがエンタメにまで昇華できていないと私は思いました。

 安齋肇さんが監督ということで、学園祭の8ミリみたいに
なっていなければ、いいなぁと思っていましたが、
それはOKでした。
 始めてとは思えない、カット割りに、演出、並びに映像としての表現
がなされています。
 本作全編モノクロなのですが、SEXシーンだけカラーとか
笑いました。

 ただ、劇伴は”Fuck me"とか全曲かっこいい
やっぱりセンスある。
サントラは欲しいかも。
 
 白石茉里奈みたいなエロくてかわいい奥さんがいて
浮気してるというのも、ちょっと自虐ネタまで
遠くなった一因かもしれません。
 まぁ、映画ですからね、、。
 みうらさんて、東映のピンク映画とかまさに日活ポルノ
全盛期を過ごしてきた人だから。
 その辺も狙っていると思います。

 ラストの台詞は、びっくりしたし、かっこいいのですが、
 映画として相対的にもう一つ。

 最後にもう一つ残念なお知らせを
 深夜割引とはいえ、見てたの私一人。
 シネコンどころか、私史上、貸し切りで映画全編見たの
始めてです。
 貴重な体験をしました。

☆☆1/3

3
na 

「何物」
監督・三浦大輔
主演・佐藤健

  全然、期待していなかったんだけど、思ったより面白かった。
でも、見に行っているということは、
何割かは、見ようという選択をしているんですよね。 
 本当に期待していないと、スルーしちゃうはず。

 原作は朝井リョウですが、朝井リョウって完全に私より
下の世代の作家です。
 というか、もうバンバン私より年下の作家って出てるわけなんですが、
  こいつは、おれより若い感覚してるやつだな絶対って
認識した第一号というか、絶対おれとちがう感覚を小説にぶつけているぞ
絶対って「桐島、部活やめるってよ」って読めてないけど、
タイトル聞いた時思いました。
 映画よりもっと個人的な小説って完全にみんな同世代に
向けて書いているんですよ、、。いつも思うけど。
 
 んで、高校生活から、大学の就活に着たか、、、。と思ったわけです。
(読んでもないのにすいません)
 映画としては、6人、うち理科系の先輩はちょっと違うかな??。
の就活を描いた青春群像撃で、その悲喜こもごもをヴィヴィッドに
描いています。
 別に、映画にしてもらわなくても、
 就活というものがいかに嘘で塗り固められ、また採用する側の
企業もどうやって人というものを測ればいいのかまだその方法論すら
確立されていないことはわかります。
 学生に一定の枠をはめて嘘をつかすのは、多分日本だけだと思うけど
 よっぽど、プロパーな職業か、専門職でないかぎり
一般職だとその人の総合的な能力なんて測れないでしょう。
 多分それも企業もわかってるはず。
ある意味、この就活というゲームは滑稽でしかない。
 でもこの映画それを描きたかったわけでもないんですね。
やっぱり最終的には、人に収斂していくわけです。

 一番、就活に適応してそうな、主人公拓人が内定を
貰えない矛盾。
 また、意識が高く、英語力というスキルすらもっている
理香も内定を貰えない矛盾。
 これはどうしてか、、、。


 最近の若手俳優の演技力もナめてました。
すごいなぁ、と思ったのが、主人公の佐藤健はともかく、
光太郎役の菅田将暉、
 いいですね、、。バンドやってて茶髪だったのをぱしっと
黒髪にし73分けにして切り替え、
「落ちましたぁ」とか言って酒飲むところとか。
上手いなと思って観てました。

 あと、これ音楽を、現在、perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅなんかの
曲を書いててたぶん、今一番音楽的に印税もらてて、
向かうところ敵なしの中田ヤスタカが演っています。
 主題歌は、feat米津玄師の「NANIMONO」この曲に
惹かれて観たのも実はある、、。
 ただし、光太郎のバンドの曲は一曲かっこいいのあったけど
劇伴で印象に残っている曲は一切なし、、。
 逆に劇伴だからいいのか、、、。
 よくわかんないけど、、。



ネタバレ




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 


 これ、終わり方ですが、佐藤健がSNSで
傍観者としてこの就活ゲームをプレーしていたのは、
いいとして、自己啓発セミナーじゃないですけど、
 いかに自分が価値が合って組織人間か喋る就活モード
から、脱却し、世界で一つだけの花モードというか、
ある意味、ぶっちゃけモードになり、自分をありのまま
さらけだして語り、象徴的にその企業のビルのドアを
開けるところで終わるのですが、
 これも、ちょっと安易すぎる着地点でいいのかな、、とも
思います。
 しかも、その戦略で内定をもらうところを描いていないでしょ、、。

 人なんて測れないってところにみんなで立ち戻るしか
ないと思うけどな、、、。

☆☆7/8かな、そんなに悪い映画じゃないと思う。

4
nagai 

「永い言い訳」
監督・西川美和
主演・本木雅弘

  西川美和の作品も、いい、いいという評価だけ聞いてて
一度も観たことがありませんでした。
 弟子とかそんな関係じゃないと思う けど
是枝さんの助監督で、弟子筋らしい。
  
 西川美和ってずーっとオリジナル作品で
自分で原作、脚本も兼ねてと、なんて言ったらいいんだろう。
私小説じゃない、自己お話し映像化表現みたいな感じ。
 全部がこの人の世界観って感じではないでしょうか、、。

 簡単に言うと、自分勝手に生きてきた人が、
といっても、反社会的に他人に迷惑かけまくってきた極悪人
というわけでもない、、。
 でも不倫はやっぱりまっとうに生きている人から見れば、
反社会的かもしれないし、他人に迷惑をかけているかもしれない。
自分の大切な人を不幸にしているから、、。
 でもよくある話で、そんな犯罪とかではないかもしれない、、。
 そんな作家の主人公が行きがかり上かかりあってしまった
家族の子育てをとおして、生き直すような作品かな、、って
  映画2/3ぐらい観たときは、思ったんですよ、、。
  でも、そんな単純な映画ではなかった。
 映画は2時間で一応決着を付けなければいけないけれど、
 井筒さんもよく言ってたけど、現実そんなすっきりうまくいくはずがないって
まぁ、この人は、アンチハリウッドの人なので、、。
 この映画だって、そうです。観ながらいろんなこと考えさせられましたが。
 幸夫くん(本木雅弘)だって必死に子育てがんばりますが、
多分、こんなハンサムな男がイクメンをするなんて、それだけで、
女性の多くは、かなりハッピーかもしれない。
 しかし、これって所詮、バイトっていうか、疑似子育てですよね、、。
 断固言えるけど本当の子育てでは決してない。 
 子育てっぽいことをしたってだけ、、。
 実際の親子関係って、もっとシリアスで、もっとタフ。
 究極親子の縁を斬ることだって出来るかもしれないけど、
 切ったって事実とどこか心がポキンっとした喪失感は残るでしょう。 
 多分、長男はよく出来た子ですが、この後のほうが、大変でしょう。
親父みたいにはなりたくないって、小学生から言ってるわけで、
親父とは価値観は全く違う。劇中で一回親父が殴ってますが、
この後も、殴り合いに成ることがないとはいえません。
 
 ただ、その辺も、脚本というか、小説を
(この小説そのものが直木賞候補になっています)
書きながら、西川美和は気づいていたはず、、。
 一応、ハッピーエンディングに見せかけて、
 生き直して180度ターンみたいな終わり方をしていません。
 それでも、人生は続くよ、明日もね、、みたいな感じ。

 西川美和の演出は、めっちゃリアル。
所謂、大げさな演技を極力嫌ってる。主人公の幸夫が
妻を失った作家としてドキュメンタリーを撮るシーンがあるのですが、
そこでドキュメンタリーなのに過剰なまでにディレクターが演出するのを
笑いのシーンに持ってきているぐらい。

 俳優たちの演技も良い。
 竹原ピストルの存在感もすごいし、一見すごいこわいけど、
怒っていないらしいところとか、、。
(因みに、私、始めてこの人知りました)
 子役の二人もとてもいい。
 小さい女の子のほうは、演技なのか、どうかすらわからないくらい。
 
3hai 
んで、さらに脇を固めるこの三人がいい。

 画像真ん中の池脇壮亮の語る、
「子供って免罪符なんんですよ」は重かった。
どんな親でも、子供の前では、いい人ぶるし、カッコつけるし、
子供は良き人になってくれと、善人ぶりますから、、。

 また、画像右の黒木華も、
こんな不倫相手の役をやるようになったか、、、と。
一言。感慨深い。

 最高に良かったのが、画像左の
山田真歩。科学館の講師役なんだけど、
人付き合いの苦手そうな人が無理から子供向けの
プレゼンをどもりながらしてるのが笑う。
 変なオーバーアクションでしゃべらないとしゃべれないのも
笑う。
 あの吃りながらの科白回しって演技なら、すごい人ですね、
この人。
 NHKの連ドラにも出てたそうですが、初めて知りました。

 いつも、出来れば、洋画、なぜなら英語の勉強になるから
とか、言っている私は、だめですね、、、、。
 邦画は、リアルすぎて、考える事多すぎですよ、、。
全部が重すぎ。
 竹原ピストルの家族が暮らす団地のロングのショットだけ
数ショットあるんですが、。で
泣きそうになったもん、、。
 また、その団地の棟の数がめちゃくちゃ多いんですよ、、。
その数だけ、暮らしがあって、こんな家族がいるかと思うと、、。

 映画的には、本当に地味な映画だとおもう。
エンタメかというと、違うとも答えたい。
 星の数は4つかな、、。
みんな考えて、感じて欲しい。

☆☆☆☆

2
161060_01 

「ボクたちの交換日記」
監督・内村光良
主演・小出恵介/伊藤淳史

 原作は、カリスマ放送作家の鈴木おさむ。
監督脚本は内村光良、この二人が描き出す過酷な芸人の物語。 
 劇中で演じられるネタが微妙で、笑えそうで笑えないから
変な気持ちになる。12年やってて売れないのだから、
いたしかたないのか、逆にリアルなのか、よくわからない。
 芸人の世界が本当にシビアなのはバラエティ番組などで
 本人たちがしゃべっているので、一般人皆承知である。
同期の世代で一組か二組しか、生き残れないのである。
 また、売れた後にテレビ局の番組にまるっきり迎合して
その地位を守らんとして生きているのも、視聴者は見透かしている。
 ある意味、全然新しくないお話かもしれない。
 この手の話は、二時間ぐらいのバラエティの再現ドラマで嫌というほど
見せられている。
 しかし、この映画が少しというか、再現ドラマから逸脱するのは、
最後半にいたってからである。
 ネタバレで書かないが、二段構えで感動が用意されている。
 感動したのは、事実だけど
 それでも、トーク番組にくっつけた、
この程度の再現ドラマはあるかもと思う。

 また、出てる女優がすごすぎ、、。
長澤まさみに木村文乃。すこし不釣り合いかなっと。

 いろんなタレントが本人役で出ているのだが、
ベッキーが本人役ででたのが、
全日本的セルフ・イメージ・デストラクションを起こした
センテンス・スプリングの後だけに
そっちが気になり、えらい興ざめになった。

☆☆4/5 

4
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「晩春」
監督・小津安二郎
主演・原節子

 小津さんの生誕110年没後50年でデジタルリマスターされた
作品群をずーっと毎週NHKBSでやっておりまして、鑑賞しました。
父と二人暮らしの婚期を過ぎかけた一人娘。この二人を笠智衆、原節子のふたりが
演じております。
 世界の小津と言われていますが、映画的には、小津調と言われるある一定の
パターンをスタイルにして撮っていて監督としてうまいかと言われると
少しむずかしい、、。しかし、これが、長年撮り続けるとスタイルになり
絶妙な 味として表現されていきます。

 映画と関係ないところでは、本作1949年の作品でして戦後4年経った
日本の市井がこんなふうだったのかと、大変興味深かったです。 

 小津さんのスタイルですが、カメラの位置がいつも低い。
 日本家屋の床にぽんと置いておいたまま撮影している感じ。
いつも床が写っています。これは、靴の文化の西洋人には撮れないでしょう。
映画でよくあるバストショットが皆無。
 そして、ほとんどのカットが、(全部か)FIXで撮られれています。
カメラワークはカチンコチンでぱきーんと決まると一切動きません。
 ドーリーショットも、パンもなし。
そして会話のシーンも、大変特徴的でして、二人を対称性を持ってワンカメで
ぽんと撮ると、後は、カメラに正対して役者がセリフを語る。
この正対して喋っているシーン、間違っていたらすいませんなのですが、
おそらく、完全な別撮りで相手役無しでカメラだけに役者が語りかけて
撮影していると思われます。どこか、悪いけど完全に不自然。
最近のバックをブルーバックや、グリーンバックのCG で撮影している
hollywood映画がよく役者の演技が白々しいといわれますが、そんな感じ。
 しかし、これが、小津さんにとっては、会話というものは、相手に正対して喋るものだという
リアル感なのでしょう。
 そして演技指導も、現場はどんな感じか知りませんが、成る手の役者さんのはずが、
すべてというか、棒読み近いセリフ回し。笠智衆さんの棒読みは有名ですが
出てくる人、みなさん名優なのにほぼ棒読みに近い。
 なにか、文化祭の8ミリみたいなかんじなのですが、

 はっきり言って、映画として下手と言ってもいいんじゃないかと思うのですが

 しかし!!。

 これが、偉いもので、映画として総合的に見ると味になっているのです。
こんな風に撮る人他ににいないわけなのです。

 脚本のほうは、大変良く出来ています。こじれにこじれるわけでもないのですが、
ほぼ精神的に共依存に近いこの二人がラストにどうなるのかと
思われるのですが、すごい結末が待っていて、静か感動が待っています。
ラストの笠智衆さんの後ろ姿なんか名シーンにあげてもいいでしょう。

 似たような作品が多い小津さんですが、未見の方は、
どれでもいいので、一本ぐらい見ても損はないと思います、。 

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