「アルプスの若大将」
監督・古澤憲吾
主演・加山雄三
ほぼこのブログで映画の製作者は書かないんですけど
この作品だけは特別。
東宝のどころか日本映画界の大プロデューサー
藤本真澄の名前を記すべきです。
今邦画を語らせたら一番知識もあって
おもしろいのが、春日太一なんですが。
この記事はその春日さんからのほぼ受け売りなので
興味がある人は直接春日太一さんのYoutubeに上がってる動画だとか
書籍だとか文章だとかを読んで下さい。
藤本真澄という伝説のおそらく日本一かな?の戦後ですけど、
プロデューサーが居ます。
所属は東宝。日本映画は戦後、東宝、松竹、東映、大映、日活、新東宝とかありましたが
概ねこの順番に大きいです。
で日本映画界がTVの軍門に下るにつけて
この順番の逆からツブれるというかだめになっていきました。
その辺は割愛して、、。
映画制作の勉強のため東宝はアメリカへ行きいわゆるハリウッドスタイルの
プロデューサー主導でPの権限が強く。
欧州へ行った松竹は監督主導。
ともちろん例外はたくさんありますがこうなったと簡単には理解されてて
間違いないかと、、。
その東宝でヒット作も出し会社をお起きもしたし辣腕を振るったのが
この藤本真澄。
東宝には大きく分けて、これを監督の派閥でわけないところが
東宝のプロデューサー・システムのすごいところですけど、、。
中でも二人居まして、すごいほうが藤本真澄。
もう一人が田中友幸です。
概ねどこの映画会社でも、上映が二本立てとか盆暮れ二回興行
(もうこの辺になるとTVの番組改編期春夏秋冬の
の二時間物のドラマよりちょっと上か、変わらない程度の作品です。)
のヒットシリーズ、プロダクションムーヴィーとも呼ばれたりしますが
只々お金を稼ぐための毒にも薬にもならない作品を連発し
お金をため、数年に一度とか一年に一度とかにどかーんと
いかにプロデューサーシステムの東宝でも
大きなテーマ性だとか作品性の高い作品を制作するという感じになっております。
で、この藤本真澄と田中友幸の二人はものすごい犬猿の仲だったとか。
もうバラしちゃいますけど藤本真澄の大ヒットシリーズがこの若大将シリーズで
田中友幸はゴジラです。
もちろんゴジラで悪い方のヒロインをやった水野久美が前言ってたんですが
一度、とにかく顔だけ出してくれと箱根のホテルのパーティーに呼ばれたところ
それが、藤本真澄系列関係の人脈のパーティだったらしく、田中友幸のゴジラシリーズで
名を馳せてた水野久美はけんもほろろに泣きながら夜中にホテルから飛び出して
タクシーで東京に帰ったことがあるとか、、。
この二人のPで東宝はカネを稼いでいました。
この藤本真澄作品群の特徴というか、肝になるのが
早い話、日本アメリカ化計画。民主主義バンザイ。
というより日本は負けたほうが良かった?。
とにかくアメリカの豊かさを真似て享受しようというもの。
その全てが詰まっているのがこの若大将シリーズなんです。
というような予備知識を得た後に一体どんな感じの
映画なんだ?と興味を持って基礎教養として本作を鑑賞してみました。
まぁ概ね想像はついていましたが、本当にそのまんま。
藤本真澄がかなり主導して創ったと言われるシリーズだけに
モロその思想性が出てるような、、。
このネガティブな要素がなくとにかく楽しくて
わーわー言っているうちに終わってしまう映画は一体何だ?。
ドラマも社会性も問題意識も全くありません。
青大将だってもてないといういだけでオープンカー乗り回して
めちゃめちゃ楽しそうだし、、。
当時なんか大学進学率なんてかなり低かっただろうし
高度経済成長や集団就職で東京にやってきた一労働者はどう思って
見てたのか、訊きたいぐらい。
まぁ夢物語。
これ日本だとまだ詰め襟着て大学生やってますけど、アメリカの高校生の
お話しをそのまま持ってきた感じですよね。
で、やたら若大将がギター片手に歌を歌うのもプレスリーの
映画を見ている感じ。
藤本真澄の考える理想郷がこのフィルムの中に存在している気さえします。
次回作の予告編が直接組み込まれてるんですけど
次は香港に行くらしい。
今だと藤本真澄的価値観から逸脱してる気もしますが
当時はまだ英国領ですからね。
しかも、メキシコ五輪の影響からか取り組む競技が
サッカー。
全スポーツを若大将にやらせているのかと、、驚きの展開に。
話は前後しますが、今回は藤本真澄のことばかり書きましたが、
別にこの若大将シリーズを見なくても、
藤本真澄の思想性は完全に補完されてて、
青い山脈なんて完全にアメリカの進歩主義リベラルを謳歌したような
作品だし。
日本でいちばん長い日 1967なんて、戦争末期の
すったもんだを描いてますが敗戦を映画の終わりの目標にした
映画ですから。
関連記事。
椿三十郎
青い山脈
日本でいちばん長い日 1967
評価。
よくよく考えると映画として成立しているのかさえわからない。
☆☆。