映画と感想

簡単な映画評です。シネコンで見ようが、DVDで見ようがTVで見ようが、無慈悲に書いていきます(笑)。

カテゴリ:邦画 > 時代劇

4
kage  

「影武者」
監督・黒澤明
主演・仲代達矢

 後期・黒澤映画の中核をなす作品がこの「影武者」と「乱」だと
思っています。

 これで、「どですかでん」以降の低迷期からも
一応脱出したし、黒澤明の後半戦が始まった。
 だけど、大掛かりな戦国時代ものとしてというより
大作映画を撮るのはさすがにこの二作で打ち止め、となった感じ。
 東宝は怒るかもしれないけど
資本的にも、この戦国超大作二作はほぼ外国映画だし、、。
 「乱」はわりとエンタメって感じがするけど、
この影武者は良いテーマとでよく出来た映画だとは思うけど
エンタメ感があまりしない。
 本作はどこか暗く、陰鬱で、
まぁ武田家は滅ぶわけで至極当然で、すんごい悲劇だともと取れる。

 というか、やっぱり後期と付けたように、はっきり言って
用心棒だとか天国と地獄とかのキレキレのころの面白さはない。
 苦痛とは言わないけど、3時間は長いし。全カット、全シークエンス、
黒澤さんのイメージどおり画面を作り黒澤さんだけが楽しんでいるように
みえる。
 おれが撮るのがすごいのであって、見てるお客さんのほうに
感心が全然行っていない感じ。
 
 元から短いカットを重ねてポンポン話をすすめる監督ではないけど、
とにかく全カットすんごい出来ではあるんだけれど、長い感じがする。
 もちろん長いからおもしろさが出てるシーンもあるんだけど、、。
タイトル前の最初の信玄公が三人いるところとか、、。

 またよく勝さんで撮れてたらどうのとかこうのとか
あるんだけれど、ちゃんと言うこと聞く仲代さんで良かったんじゃないかと。
 これ役者の演技も見モノの映画で御館様を演じる影武者を
役者が演じているわけで、このふるまいの差だとか、
微妙な感じを表現するのは役者冥利につきる気もします。
 役者が演じているやつを演じるんだから。
 仲代さんってあんまりうまい役者だとは私、正直思っていなかったけど
今作の振る舞い一つで下賤の盗人を表現したり、
いつのまにか入れ替わって、孫に好かれてなかよくなっちゃったりとか、
 めちゃめちゃうまいと思いました。

 で、孫にせがまれ馬に乗ってバレるなんて脚本も良く出来すぎ。

 ラストの一大スペクタクルの長篠の戦いも
武田側の本陣で本隊司令部がおののくところなんて
オーバーディレクションの黒澤さんの真骨頂。
 というか、映画の騎馬戦あるあるですけど
 馬が怪我するんでそんなにたくさんの馬を転ばすことが出来ない。

 もうちょっとバシバシ切ってテンポよく編集ができてらなぁ、、とか
思うんですけどね。
 予算的なリッチ感とか堪能できるけど、
単純に長いと思います。

関係記事。
用心棒 

隠し砦の三悪人 

わが青春に悔いなし

赤ひげ

「七人の侍」 

椿三十郎 

雨あがる 

評価。
☆☆☆☆。


 
 


 

  
 

3
owl  

「梟の城」
監督・篠田正浩
主演・中井貴一

 企画から大変な作品だと思っていたけど、まぁ篠田正浩の
脚本と演出でどうにかここまでのレベルに持っていったという感じ。

 本当は司馬さんの原作を読んでみたいんだけど、あんまり気が進まないのも
事実。
 司馬さんが喜んで書いたとも思えいない。
 司馬さんのリアルポリティクスというか、リアルヒストリーとかの戦国史観から言うと
私もそれにかなりの割合で乗っかっているんだけれど。
 忍者って真正面からリリアルに描けば描くほど浮くというか本当に扱いにくい。
 白土三平なんかの作品での表現というか扱いがギリ限界。
 忍術は体術だってことでまぁまぁ私も納得はするんですが、
もし、スーパーヒーローみたいな扱いで忍者を許容してしまうと
リアルな外交や戦略を屈指した戦国時代とか江戸時代が成立しないと思っています。
 だけど、どこかフィクションとしては、いいかなとか、、思うし。
 そこがしっくり納得しないままどんな作品で忍者を扱おうと
違うんだよなぁ、、て思ってしまいます。
 伝奇小説と歴史小説の間でフラフラという感じです。

 信長の伊賀攻めとかは良いんだけれど、
 もしあんなに簡単に天守閣の城に忍び込めたら歴史が簡単に変わると
思うんですよ。
 だからどれくらい設定や脚色ですごい忍者だ延々ニ時間描いて盛り上げようとも嘘くさいなぁとか、
あんな仕掛け無しで出来るんなら最初からそれをやれとか思ってしまうわけです。
 で、またネタバレしちゃいますが、結果殺さないでしょ。
 あそこも、いとも簡単に殺して、
そのあとは影武者が統治したから豊臣家はだめになっていったとか
すれば面白いのにとか、思うんですけどやりすぎですか?。
 唯一考えたなぁと思ったのが石川五右衛門とのスイッチング。

 監督の篠田正浩ですけど、この人はなんと言っても、
すごいのは、「はなれ瞽女おりん」です。
 前にも書いたかもしれないけど小学生頃に見たトラウマ映画の一本に
なっておりまする。
 ほんとうにすごい映画です。
 障害者の性の問題まで当時にしてきちっと描いているし、、。
 ヒロインが髑髏にまでなる映画が古今東西にあったか!?。
 あのドクロと下巻きの赤は大人になった今でも心に焼き付いております。
 しかも監督の嫁だぞ。
 
 関係記事。
記憶にございません! 

 評価
☆☆☆。

4
yamazakura  

「山桜」
監督・篠原哲雄
主演・田中麗奈/東山紀之

 ただ、泣き。

 脚本と脚色によるのかもしれないけどこれでこのブログで散々書いてきた、
藤沢周平は山本周五郎よりはるかに上、説はかくしてここに円環を完全に閉じた。
などと思っております。
 こんなの山本周五郎に書けないだろう。あともっとエンタメに振ってる池波正太郎さんにも。

 花のあとと似たような企画なんだけど、(企画だけね)
ドラマ、社会性、ハードさ、人の心に訴えかけるものは本作の「山桜」が圧倒的に上。  
 強いて難を上げるとすれば、エンタメというか金を取って見せる商業作品としては
ちょっと地味すぎるぐらいかな、、というぐらい。
 ただ、これ文化庁のコンベンションというか国のお金が入っている半分国作映画なので
商業作品とも言い難いんですよね。
 まぁ良いとして。
    
 これね、田中麗奈の嫁ぎ先、永島暎子が姑をしている磯村家を安易に悪として
受け取りがちだけど、ちょっと違うんですよね。
 家の格からいうと田中麗奈の実家のほうが倍の石高で圧倒的に上。
 だけど、出戻り、二度目の嫁ぎ先(お古とこんな言葉使いたくないけど)
ということで持参金までつけて磯村家に田中麗奈の実家がマウントを取って無理くり押し付けたとも取れるんですよね。
 実際そうだし、家単位で給料から職業まですべてが決まる江戸時代そんなもんでしょう。
 だけど、田中麗奈も最初の嫁ぎ先で旦那さんと死別しただけで落ち度もなんにもない。
 ただ、悲しい運命を生きているだけ。
 で、田中麗奈は田中麗奈で磯村家では旦那に身体を一度も許してないというんでしょ。
 これも、旦那というか男というか女性も逆の立場だったとしてもマジで辛いよ、、。
 そりゃあ嫌味も言いたくなる。
 この作品全般というか、すべてにおけるこのギスギス感はなんだ。 
 全員が不幸でマジで可愛そう。
   
 東山紀之も可愛そうさでは、負けてない。母一人子一人の家庭で姑の世話が大変そうだからと、
嫁さんさえもらえていない。
 そんな自分だからこそ身を捨ててまで権勢をほこる諏訪を切ろうと思ったのではないか。
 完全な悪はこの家老だけだわ。
 それを説明するための農家の窮状は悲惨すぎてもう見てられないレベル。
 だけど、今の格差とかいう時代もそうだけど、全員おんなじ人間だよ。
 そして、こんな東山紀之みたいな人が本当にどこかに一人でもいれば、世の中もっとよくなると思う。
 
 この殺陣もすごかった。

 この映画唯一の見せ場なんだけど、西部劇での一回きり撃ち合いのシーンみたいに。
 東山紀之の刀の抜き方、刀の使い方に注目してほしいんだけど
 諏訪の周りの取り巻きは全員みね打ちか、刀の柄で打ち付けただけなんですよね。
 で諏訪も武士の端くれ一応刀を抜くんだけど、もう居合いの段階で東山が圧勝してるんですよね。
諏訪が息こんで上段に構えるともう東山の切っ先は諏訪の喉元に。
 それでずばっと斬るのかと思いきや、正眼の構えに戻しきちっと勝負してやる。
 相手は私腹を肥やした悪党とは言え、ちゃんと勝負してやるんですよね。
 結果は書くまでもない。

 ここまで、あまりにもハードな現実を見せつけられてきたから、ここから先はちょっと甘いんじゃないかとさえ思っちゃうんだけど、、、、。
 まぁ、一応商業作品なのでこれぐらいにしておかないと、、。悲惨なだけの映画になっちゃうから。
 だけど、普通藩士が城内で刃傷沙汰をそれもまぁ乱心と見るのかわからないけど私怨私闘ですら
ご法度です。
 切腹で済んだら武士として死なせてもらえて良い方で、
打ち首だってあり得るぐらいでは、、。時代考証の方に訊いて下さい。
 で、田中麗奈がご沙汰のないまま手塚の実家に訪ねるところもあるんだけど、
 普通、蟄居閉門ですよね、よって沙汰をなすぐらいの、、、。
 で、東山の母が緋牡丹のおりゅうだという、、、。富司純子。
 びっくりしました。
 あそこで、実家というか、あの家の庭木が伸び放題だとか障子が破れてるとか藤沢周平さんなら
書いてそうだけど、、。
 原作は知りませんよ。

 ラストも良い。
 ハッピーエンディングを想像しやすい状況だけ描いて、観客に丸投げ。
 どうでも、なんでもあなたが決めれば良いと。
 この作品の世界観なら、、と。氣の弱い私は思っちゃうけど、、。
 いや、やめておきましょう。
 さすがの私でも、これで駄目なら完全にもう耐えられない。
 いたずらに悲劇にするのも、あざとくて冷めるもんです。

 社会性、ドラマ、人を理解してそれをきっちり見る視点を持った脚本、
めちゃめちゃよく出来た映画です。

関係記事。
 緋牡丹博徒 

花のあと 

評価。
 本当は☆5つでもいいくらい。
☆☆☆☆。

3
花のあと  

「花のあと」
監督・中西健二
主演・北川景子/甲本雅裕

 藤沢周平原作ということで、見逃したときからずーっと期待したんだけどなぁ、、、。
 率直な感想は、次第点、可もなし不可もなしというところ。

 父親の影響もあって私は「藤沢周平」をめっちゃ読んでます。
 本当は私の父親の世代の作家さんですよね。
 多分、父親よりたくさん読んでるんじゃないかというぐらい。

 前に当ブログで書いてると思いますが、黒澤さんの時代は山本周五郎。
山田洋次の世代は藤沢周平って感じ??。団塊の世代かな?よくわからないけど。
 山本周五郎の方が単純に一世代古い感じですね。
 だけど、あまり山本周五郎の作品は
読めてないんだけど、私的にはファンの方には申し訳ないけど
この二人比較すると藤沢周平の圧勝まではいかないまでも完勝ですね、、。
 エンタメ性はどっこいどっこいかもしれないけど、人情噺+アルファが
かならず藤沢作品の方にある感じです。
 ただ、圧倒的に全体的に暗いですけどね、。
 まぁ単純に作品の登場時期の小説としてのリーダビリティかもしれないけど、、。

 本作ですけど、女性剣士の作品ということで、藤沢さんとしても
かなりエンタメ側に振った感じではないでしょうか、、。
 原作についてはこのあたりにして、、。

**************

 これ、目線が低いとか散々当ブログで書いている製作は東映です。
 なぜかOVAで有名なバンダイ・ビジュアルも金を出してるみたいですけど、、。

 おばあさんが若い時分を振り返る形式で書かれてますが、
これは、残念ながらどっちでもいい感じ。

 主演の北川景子ですけど、この人明大でしたっけ一で、ブログなんかでも
めちゃめちゃ長文の記事を書くのでいっとき有名なったぐらいで一応才女というイメージ。
 わりときつい感じ美人で女性剣士にピッタリ。
 割といいところの武家の娘風のきれいな着物を来てろときより
髪を下ろして後ろにまとめただけで稽古着を着て睨みつけているときのほうが
完全に映えるし美しく見える。
 まさに当たり役。
 だけどね、、一点だけ、台詞回しがね、、、下手。
 若手の宮尾俊太郎もうまいとは言えないんだけど、どうしてでしょうね時代劇だと
セリフ回しが現代劇より如実に気になるんだな、。
 別に舞台みたいに朗々セリフを言えとは思わないんだけど、TVドラマでも
時代劇だと台詞回しがめっちゃ気になります。私だけかもしれないけど。

 問題の女性剣士だけど、「竹刀を振っているだけなら、、、」
というセリフが劇中にあるぐらいで、竹刀だけの試合や立ち会いならたぶん女性でも
相当やれると思う。
 だけど木刀や真剣となると果たして膂力のある男性と渡り合えるか、、。
 新選組なんか刃引きの鉄身で稽古してたっていうぐらいだし。
 薩摩の示現流もとにかく永遠に素振りさせて叩き割るぐらい勢いだったってきくし、。 
 ましてや、多少卑怯かもしれないけど鍔迫り合いで男性側が強引に押し潰しちゃえば
簡単に勝てるような気もするけど、、、。と思っていたら
 実はなんとこの辺を全部とはいわないけど割と考慮された殺陣が用意されていたんですよ、、、、。
 それと東映の殺陣といえば、どっちかというと他社や他映像制作会に比べケレン味を重視する
殺陣で傘でしかも開いた傘で真剣を受けたりとか演出であります。
 傘なんかこんなの刀でバッサリでしょう。
 
 でやうやうあってラストの市川亀治郎との切合になるんですけど、
以登が男性の打ち込みを受けるときに刀のみねに手を添えて受ける殺陣が、、、。
 まぁ、伏線で稽古のときにもやってましたが、、。
 あのへん、非力な女性剣士を十分考慮された殺陣です。
 受けたまま、そのままずぶっと。 
 で、今度以登は右腕の上腕部を切られます。
 つまり、両手でもう剣を持てない!!。
 ところが、剣は野球のバットと同じで右利きの場合というか、当時は全員右利きに
無理から直されるんですけど、(今でもかな?)で、例外が左利きの新選組の斎藤一という、、。
 実は、剣は右持ちしかないんだけど右持ちの場合、
実は柄の先っちょを握る左手が最重要なんです。
 刀は左で振っているようなもの。
 この辺めちゃめちゃ考えられた超ド・リアルな殺陣なんです。
 だけど、非力な女性が左手一本で重い真剣を持てるのか!?。
 これを以登は持っちゃう。
 以登も、そらーめちゃめちゃ強いって演出です。

 で、ラストは、、、、。
 伏線張られまくりの小刀でズブリなんだけど、、、。
 うーん、これはね、、。まぁ、良いか。

 見てたらしい後の旦那の甲本が後ろから斬るのかと思ってたけど
それよりはマシかな、、。
 後始末な全部この後の旦那がつけるという、、。
 いい人じゃん。

 お尻を触ったりしてたときはどうなることかと思ってたけど、、。

 まぁ割と楽しめたんだけど、、。
 もう一捻りというか、脚本的になんか足してほしかったみたいな、、。
 やたら一年分の日本固有のキレイな情景がカット間にはいるんだけど、
俳優さんは一年間拘束して撮った感じではないし、、。
 美しい景色を撮りたいのはわかるんだけど、やや間延びした感じ。

 まぁ、可もなし不可もなしということで、、、。

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哭声 コクソン 

武士の一分 

「隠し剣 鬼の爪」 

評価
☆☆☆。

5
Sanjuro poster 

「椿三十郎」
監督・黒澤明
主演・三船敏郎

 「用心棒」と双子関係にあるこの作品。
というか、制作順も次作ですし、続編なんですけど、、。
 黒澤さんって頑なに続編を作るのを嫌っていたかと
いうと、「姿三四郎」が失念していました。

 「用心棒」と本作どっちかといわれると、私的には圧倒的に
「用心棒」なんだなぁ、、。
 まず、「用心棒」のほうが完全なノワールだし、
邦画で誰も考えなかった西部劇のスタイルで作ったちゃんばら映画だしで、、。
 今回見直して思ったけど、
「椿三十郎」ってアクション映画っていうより
コン・ゲームの要素が強いんですよね。
 元々剣の腕がだめな人を主人公にした原作だったらしいし。
 
 桑畑三十郎が、椿三十郎になって帰ってきました。
元々椿の花はぼとっと落ちることから、
お侍さんには首落ちる様に似ていると言われ嫌われたそうですが、、、。

 女優は団令子さんと入江たか子さん。
入江たか子 団令子

団令子
 団令子さんは東宝の看板女優で、クレイジー・キャッツとか植木さんの
作品なんかによく出ていますね。 
  顔の造作は派手な感じですが、丸顔が親近感を持ちやすいみたいな、、。

コミック・リリーフ
 入江たか子さんも、戦前の無声映画のころから活躍するお姫様女優だったとか、、。
この映画では、ふたりとも完全なコミック・リリーフの役回りですが。

 コンゲームと書きましたが、どこかのんびりした感じで、楽しい感じなんですね。
で、またこんなに企みが全部うまく行くはずないとも、思っちゃったりするわけで。
三船敏郎 仲代達矢
 なにやら思案中の二人。

 ワタシ的には、少し評価を下げている作品です。
 今回見直して思ったのは、仲代達矢さんが良いですね。
仲代達矢 アップ
 このドスの利いた存在感のある顔付きを見よ。

 「用心棒」の卯之助はなんか存在感も台詞回しも弱いなぁ、、と
思っていたんですけど、丑寅がいい味を出しています。
 今回は悪の部分を1人で担っている感じです。
 「用心棒」で白っぽかったので、今回はドーランを塗りまくって
真っ黒にしたら出来上がったらしいですけど。

 もう話し尽くされた話題かもしれませんが、チャンバラの折に
人が切れるブシュという音を足したのが黒澤さんということになっていますが、
「用心棒」を見ていたら、なんとあら不思議。全然音がしない。
「用心棒」では、一回切られたぐらいで人は死なないだろうということで、
1人2回切ったことでも有名なんですが、本格的に音を入れだしたのは、
私が見る感じ、当作品からです。
 そしてそのすごい殺陣。40人斬りの殺陣のシーン。
ちゃんばら

ちゃんばら

 これも、リアルに言うと、全員がきっちり死んでいるとは思えず。
誰か、駆けつけた仲代さんに虫の息で報告しそう、、。

 そして、日本映画史に残る切り合いというか、居合いというか、
のシーン。
ラストちゃんばら

ポンプ

 もうなにも申しません。

 「用心棒」ではね、卯之助が切られてから、優しんだなぁ、とか、
そいつをもたせてくれ、、とか、
 卯の助が色々しゃべるんですね。あれは、ちょっと要らないなぁと
思いながら見ていたんですけど、
 今回は、あっさり。これは、いい感じです。

あばよ

 そしてあばよ、と。
 肩を大きく揺する癖が出るのはここだけかな、、。
 もっと前半でいっぱいしてほしかったなぁ、、、。
 
 「用心棒」がヒットしたので、その主人公を「日々是平安」ですか、
そこに当てはめた感はどうしても、やっぱりしますね、、。
 なんか血生臭くないというか、ほんわかしているというか、、。
 しかし、邦画史に残る痛快娯楽時代劇であることは間違いなしです。

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「用心棒」 

隠し砦の三悪人 

わが青春に悔いなし 

赤ひげ  

七人の侍 

雨あがる 

花のお江戸の無責任 

ニッポン無責任時代 

日本のいちばん長い日 1967 

評価
☆☆☆☆☆。

5
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「大殺陣」
監督・工藤栄一
主演・里見浩太朗

 撮影順でも、工藤栄一監督の十三人の刺客 1963
次作に当たる作品。
 ほぼ、企画としては前作と同じで、
今回は五、六人で三、四十人と切り合います。 
 といっても、狙うは甲府宰相一人なんですけど。
 下っ端の侍が偉い悪いやつを襲うという東映路線すばり
ど真ん中です。
  
 タッチとか雰囲気もほぼ一緒。めちゃめちゃハードでリアル。
 言葉が古すぎて私でも必死にならないと何を説明しているか
わからないナレーションと、まぁ昔の人は基礎教養としての江戸時代の語彙が
豊かなんだなぁ、、と思う始末。
 前作に比べると、若干ラストに持っていく途中の
緊張感が弱いかなぁ、、と思うぐらいで私としてはめっちゃ好みですね。
 この工藤栄一監督を知って正直、東映の時代劇のイメージが
変わりましたね。
 仕事人の途中から最後の方のシリーズじゃないけど
傘で刀を受けたりとか、リアルとかハードよりケレン味あふれる殺陣
が売り物だと思っていたのですが
 こんな時代劇も撮っていたなんて、、、。
 こんな感じで戦国時代も撮って欲しいんだけど、静かな江戸時代の
中に残酷に切り合うから良いんだって感じなんでしょう。

 色々策を巡らせて、行列の人数を減らすのまで前作と同じで
ここは少々またか、と思うところ。
 
 ただ、吉原に続く町家しかも、町家みんながそろって畳を上げて
掃除しているところへ追いこんで、そこの人々まで巻き込んで
女性や町衆がきゃーとか逃げ惑う姿を入れた殺陣は
相変わらずすごい。
 特に、門があって、周りを掘りで巡らせていたという吉原が
完璧に再現されていまして、めちゃめちゃリアル。
 その堀やその堀の周りの泥田で切り合います。

 これ、策するのは悪役ばかりやる安部徹なんですよ、。
 ええ安部徹が良い方につくの?と思っていたら、
 ご安心あれ、この軍学者、立てるのは策だけ。
 見てるだけ。
 やっぱりおまえは、、、という感じ。安部徹ってね気づいたの
「はなれ瞽女おりん」なんだけど、これも、幼少期に見て
私、しっかりトラウマになっている作品で
ものすごい作品なのでチャンスがあれば一度見てください。
 あと、七人の侍で参謀役だった稲葉義男も逃げるんだな、、。
 でも、ちゃんばらで逃げるの黒澤さんでたくさん見たけど
リアルだと思う。
 全員が図ったかのように切り合うなんてちょっとないでしょ?。
 それと、壮絶なのは主役の剣が折れちゃう里見浩太朗より、
家族を全員殺してから切合に向かう大坂志郎ですよ。
 しかも、貧しくも仲の良い家族のシーンをたっぷり描いといて。

 時代劇だけは、昔の邦画のほうが良いかもですね。

関係記事。
この首一万石 

ペコロスの母に会いに行く

十三人の刺客 1963 

評価
☆☆☆☆☆。

5
13n 

「十三人の刺客 1963」 
監督・工藤栄一
主演・片岡千恵蔵

 面白い。よく知らないけどたぶん日本映画史上に残る傑作だと思う。
 
 超ハード時代劇。これだけど東映なんだね。
 東映というと時代劇もメインディッシュなんだけど、どっちかというと
殺陣とかケレン味を重視してて面白ければ、良い、
見栄えが良ければ良いって作風だと思っていただけに意外。
 必殺仕事人シリーズとかを思い出してください。

 だけど、これ、絶対制作するにあたって、七人の侍が念頭にぜったいあったと
思うんだな。
 特に、ラスト30分に渡って繰り広げられる一つの宿場町を要塞化じゃなかった、
砦みたいにして戦うシーンなんか、、、。
 時代劇をよりリアルにハードに面白く描いているだけに
七人の侍と比べちゃうんだけど、そうすると、人間も描けてないし
ドラマとして弱いと思う。

 それと江戸時代は疎い歴史好きからしても、
ラストの宿場町での十三人VS五十何騎を描きたいがために
 すべて脚本があるようで、ちょっといくらなんでも設定が無理筋だと思う。
 明石藩10万石に養子にいった残忍な将軍の弟でも、旗本が
たった13人だけで討ち取るように幕府が処罰できないってないんじゃないのかな、、と。
 丹波さんが駄目だ。って再三セリフで言うけど、、。
 他にやり方があるでしょう?と。
 それに、宿場全部借り上げるのも旗本とは言えお金が足りるのかと。
 また江戸時代は特に侍は敵討ちの時代で、このあと、明石藩が報復に
出ることはないのか、、、、。
 赤穂浪士の例をとっても見ても穏便に済むはずがない。
 と脚本や設定にケチは付けられますが、
 ラストの宿場での殺陣どころか、戦闘はリアルの一言で、
凄まじく圧巻の出来栄えです。
 また、ネタバレになってしまいますが、
 片岡千恵蔵のラストも意外や意外。
 書いてて気づいたんだけど、あれで、明石藩の敵討ちをパーに
しちゃったんだね。
 武士とは死ぬこととなんとかしたりみたいな、
全員が強烈な自己犠牲の上で成り立っています。
 13人全員キャラ立てするのって不可能だけど、もうちょっと
主要キャラぐらいはドラマを作ってほしかったなぁ、、。
 あと、最初弓矢で数を減らしていくんだけど、七人の侍
トリックがあるんだけど、背中に矢が実際に刺さりますから。
 背中に板を入れて糸を張って其処を走らせるらしいんですけど。
 そのあたりもちょっと弱い。

 七人の侍でいえば、宮口精二みたいな西村晃もかっこいいんだけど、
なんと言っても、かっこいいのは、ヴィランの内村良平さんですよ。
 頭も来れるし、腕も立つし。
 橋を崩したからには、徒士で渡れるところがあるはずだっていうセリフに
はしびれました。
 それが、あのラストの泥田で寝っ転がり笑う侍につながるんでしょ。
 あの完全に包囲された宿場から出られた、と。

 色々ケチを多少付けましたが、
めちゃめちゃおもしろいです。
 絶対オススメします。

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七人の侍 

新選組 1958

血槍富士 

評価
☆☆☆☆☆。

3
za 

「座頭市兇状旅」
監督・田中徳三
主演・勝新太郎

 一応、4作目になるらしいです。
 勝さんって「兵隊やくざ」にしろ「悪名」にしろ
ある意味究極のプロダクション・ムーヴィーに生きた人ですから、、。

 本作では、一作目の「座頭市物語」の女優のトップだった万里昌代さんが
復帰。この人、新東宝というちょっと変わった映画会社の出で
日本では珍しい肉感派の女優さんです。
 だけど一応、女優のトップの扱いは高田美和さんなんですね、
お嬢様の役でおぼこい感じでちょうど、同じ大映の大魔神
雰囲気とそっくり。
 勝さんも若いですね、、、。こうやって見るともう何回も再放送されてますが、
TVドラマの座頭市物語って大分後で作ったんですね。
 これ数え方にもよりますが、シーズン3ぐらいまである感じですが
残念ながら、徐々に勢いが衰えていく感じですが、
ファースト・シリーズは本当に神シリーズですね。話もいいしゲスト俳優も
びっくりするような人が出ています。

 で、本作ですが、若い版と中年版と二組のカップルの話を
うまく絡ませて、ものすごい標準的な座頭市のおはなしに仕上がっています。
 出来も真ん中ぐらいかな、、、。
 本当に標準的なスタンダードな座頭市って感じ。

 印象に残ったセリフは高田美和さんの養父に市がいう、
「目明きは欲が深くていけねぇ」というセリフと
「盲だから、説教できるんでぃ」というセリフ。

 痛快娯楽時代劇なんだけど、やっぱり障害者と健常者、
もしくはハンデを追った人からの視点のドラマには違いないんですね。
 そこで、ドラマ性がぐっとあがります。

 最後の大チャンバラですが、銃が出てくるわりには、
ちょっとあれ、銃はどうなったのと、、。
 ライフルと市の居合いのところ脚本でか、
殺陣師の人が掘り下げてほしかったです。

 でも、ラストの別れのシーンで殺してしまった相手の母親との
やり取りはホント涙モノですね、。
 最後のおっかぁというセリフも込みで、、、。

関係記事。
不知火検校

座頭市血笑旅

座頭市血煙り街道

座頭市喧嘩旅

大魔神

評価
☆☆☆。





 

2
seki 


「関ヶ原」
監督・原田眞人
主演・岡田准一

 最近製作委員会にTVが絡んでいるのは早く地上波でも放送されますが
悪いけどこれは駄目だわ、、。
 しかもね、比較はできないと思うけど、今丁度若い人と勤め人には
殺人的放送枠でNHKのBSで大河ドラマの「葵 徳川三代」をやってて
ほぼ同じ場面、関ヶ原に向かうギリギリかな?第一話だけ特別に
関ヶ原のシーンだけやって、そっからもとに戻ってという構成で
丁度いま、この映画の手前ギリギリをやってました。
 単純に大河ドラマと2時間ぐらいの映画って比較できないけど、
いかに大河ドラマをとくに、この「葵 徳川三代」の関ヶ原の合戦シーン
は多分私が見た関ヶ原の合戦シーンの中で一番迫力があって史実的にもわかりやすい。 
 古今東西で映像化された最高の関ヶ原の戦いかもしれません。
 それと比較されちゃあかわいそうかもしれないけど、
これはね、駄目だわ。←二度目。
 
 実は、原作、私幼い頃途中で読むの放り出してて、原作の構成とか比較できないけど
関ヶ原と銘打っている割には、関ヶ原の合戦シーンがとにかく少なすぎ。
 以後300年間を決めた大戦ですよ、、。戦闘シーン30分もないじゃん。
 あと、いかに大河ドラマのほうがお金かけているか如実にわかる。
 物量もとにかく少なすぎ。
 漫画やアニメもそうなんだけど、10人ぐらい描いて
1万人とかいるように演出しないといけないんだけど、
 全然多そうに見えないし、これは単に予算と物量の問題だと思うのだけど、
見てて泣きそうになる。
 それと、話題にもなってるキャスト全員によるセリフの早口だけど、
まずある程度東西の諸将を知ってないとわかんないんじゃないのこれ。
異様な早口でしゃべる理由がわからない。
 単に尺の問題なの?。
 草の者と忍びだけど、これは原作にも取り上げられていたのは
最初の方読んだので知ってるけど、ガチガチのリアル描写かリアル歴史ものに
忍者はあわないんだわ、、実は。忍者だけとかだと成立するんだけど。
 まぁ、わかると思うけど、忍者がサイキョーだと守る側も結界を張ったり
するんでしょうが、戦する意味なくなるんですよ。
 情報網としてはありだと思う。だけど暗殺を狙い出すと、梟の城でしたっけ
あれも、司馬さんが本気で書いたとはいつも思えないんだな、、。
 一番エンタメに割り振って、伝奇小説や講談を入れて大作家にならんがために
書いた気がしてならない。
 もっとリアリストですよ司馬さんは。というか、司馬さんのすごいところと言うか、
目立ってたところって、戦後世の中、文壇も含めて全員左に転びました。
 逆に戦時中は真ん中辺の作家も含めて右に転んでたんだけど。
 そのそれこそ自虐史観一辺倒だったところにポツンと
私達の歴史は誇れるものだ、少なくともこれぐらい立派な人々が居たと、
一人高らかに高度経済成長時代の這いつくばって頑張ってるサラリーマンに
右とはいわないけど、(まぁ右だな)
ちょい右ぐらいで自虐史観を覆していったのが司馬さんです。 
 で、私に言わせると、歴史物は塩野七生さんとかもそうだけど、
ゴリゴリの右とかゴリゴリの左より、ちょい右ぐらいで陰謀史観と
英雄史観がエンタメとしてはサイコーに面白い。 
 私からするとゴリゴリの右もゴリゴリの左も両方読んでて痛々しいんだな。

 閑話休題ですけど、、。

 早い話、製作委員会方式で扱うテーマじゃないわ、ゲムスロみたいに
CG入れまくって、モブを完全にCGにするんじゃなくて、人の位置をずらして撮って
aftereffectで足していくんですけど、それぐらいしてほしかったな。
 こんなに大合戦に見えない関ヶ原の戦闘シーンもちょっとないでしょう。
 あとは、上記と重複するけど、大河ドラマより昔から関白秀次処刑から
描きながら、きちんと歴史的事実を早口のせいもあるでしょうがフォロー
しきれていない。
 逆に知っていないとわかんないじゃない?。で、そこが長いから困ったもんだ。

 ただ、褒めるべき部分もあるにはある。
 これwikiによると、元々島左近と小早川秀秋を主人公にして脚本かいてたそうですが
この二人に関してはめちゃめちゃキャラ立ちしてる。
 島左近はまぁ今まで何度も大河ドラマやTV局の年末特番ドラマで描かれてる
範囲内にちょっと足した程度だけど、
 小早川秀秋は逆に素晴らしいほどのキャラ立ち。秀秋
といえば隆慶一郎と原哲夫
の影武者徳川家康のイメージが異様に残っているんですけど、
 この解釈は納得だし、新機軸。キムラ緑子が演じるおねさんのepiを
もうちょっと足してほしかったかな、、と。
 小早川の裏切で追い詰められる大谷吉継のシーンなど人が少なすぎて
逆に別の意味で悲惨さが出ていたけど、、、。
 実際大軍で、真後ろから山を駆け下りられて潰れるって想像と
いうか、イメージすらわかないんですね、、。真後ろ向いている軍隊が
どれくらい弱いか?って。 

 朝鮮から火薬の専門家を連れてきたのも、弩も
すべってたなぁ、、。

 で、主導してる原田眞人ですけど、どっかで聞いたことあるなぁと
ずーっと思っていたんだけど、「ガンヘッド」の人なんです。
 これも、雇われ監督だったのかやりたかったのかわからないけど
マクロスの河森正治がデザインまでして、所謂アニメと実写の
融合みたいなオタクが大喜びするべき企画だったんだけど
 見たのに覚えていないぐらいがっかりの作品だった。
 それと、リメイクの日本のいちばんながい日もやってるのか、、。
 あれは、岡本喜八さんの最高傑作だと思っているので、
あえてみたくないです。

 逆に大戦(おおいくさ)を描く映画って実は、難しいんだなぁと
思ったぐらいです。

関係記事。
蠢動 

どら平太 

評価。
☆☆。

4
ra 

「雨あがる」
監督・小泉堯史
主演・寺尾聰

 監督を黒澤明と書けないところが悲しいんですけど、
まぁそんなことありません。

 この映画めっちゃ好き。

 以前、内村光良が、レンタルビデオでもシネコンでもなんでも、
何々映画のスタッフが結集して創った、なんとかって映画は
ほぼ例外なく面白くないって言っていました。 
 概ねどころか、ほぼ賛成するけど時々そうでもないのが存在します。
 まぁ、映画って個人的感想で面白ければ良いのであんまり気にしない
で良いと思うのですけど。

 本作がそう。

 これ、ほぼ黒澤組で演者も含めて撮っています。脚本も黒澤さんだし
監督と演出を黒澤さんがやっていないってだけぐらい。
 で、またそのスタッフが集まって撮っている、制作している雰囲気が
同窓会的でいい感じなのが透けてというか、作品を通して
伺えるんですよね、、、。
 黒澤さんだったらこうしてた、ああしてたとか、言いながら
亡き恩師を懐かしむように撮ってる。
 絶対そう!。見ててそう感じてしまう。

 多分、用心棒とか撮ってた尖ってエンタメに徹して
撮っていたときに比べると出てくるのはいい人が多くて
何倍も甘い作品だってことはわかるし、退屈だと感じる人はいるでしょう。
 だけどね、黒澤さんも晩年は「夢」で
笠智衆さんに「生きているとはいいことだ」
とか言わせるし、だいぶ丸くなってた。

 そのなんか黒澤さんも丸くなった感と
同窓会ムードも含めていい感じで好きです。
 映画としてのクオリティも相当高いと思う。
 だって、美術からカメラ、衣装、黒澤組そのまんまだから
演者の役者さんも、丁度「乱」のころぐらいを基準に
配役を決めているって感じ。
 一番いい感じ出しているのが、殿様役をやっている、
三船敏郎さんの実の息子、三船史郎さん。
 はっきり言って、台詞回しは下手。
 素人芸なんだけど、お殿様の常人じゃない感が出てて
いい感じで、味を出してます。
 まぁこの辺はセンスなんですけど。

 あと、寺尾さんの殺陣もリアルで好き。
 江戸時代の剣術って実は竹刀が入った段階でちょっと実際の
切り合いとは違う方向に価値観を持っていったところがあるんですけど
(ミリオタの私からすると)
(大体、木刀はともかく実剣は竹刀ほど軽くない)
 それを躱すってところでリアルに戻した感じ、、。
 似たような企画のどら平太よりは相当上だと思います。

 ちょっと甘いかもしれませんが、好きな映画です。

関係記事。
どら平太

隠し砦の三悪人 

わが青春に悔いなし 

赤ひげ  

七人の侍 

用心棒 

評価 ちょっと引き締めました。
☆☆☆☆。

3
dh 

「どら平太」
監督・市川崑
主演・役所広司

 四騎の会と自称して結成した日本の凄腕映像作家による
合作脚本を市川崑が独自の映像美学で映像化した作品。
 本当に四騎の会の面子ってすごいんですよ。黒澤さんに木下恵介さん
そして、大作人間の条件シリーズと私が勝ったにすごいすごいと、
持ち上げる、切腹 ↑これも、←これも、おすすめ。
 小林正樹。ただ、4人共作風がバラバラだってのは、
多少気になりますが、、。
 
 これね、企画というか、設定はすごいよく出来ているんですよ、、。
”堀外”と呼ばれる、藩の役人捕り方や役人も手出しできない無法地帯。
 そこを殲滅するため単身乗り込む、どら平太という二つ名を持った江戸詰めから
藩詰めに変わってやってきた謎の凄腕の奉行。いったいどうなる?
みたいな、、
 だけど、もう老境に達した市川さんの演出のせいか、
もともとの脚本のせいか、どっか、優しいというか、厳しさがないですよね。
怖さというか、、、。
 堀外の描写も全然怖くない、、。ちょっとした三家のヤクザが仕切る”シマ”
位な感じ。
 役所広司さんの豪放磊落な痛快な感じは全編よく出ていると思いますけど、
 なんだろう?用心棒みたいな、近世のあらあらしさとか非常感が
伝わってこない。
 逆に本編中でもありますけど、ヤクザのいう事聞いていると
上がりは取られるけど、それなりに暮らせて幸せそうだ、、。
 どうせ合法的な”上がり”の年貢は取られるんだし、で。

 それと、私自身が時代劇に対して武断派なのかもしれないけど、
それほど三家のヤクザの親分とのコンゲームの要素も少ないし、
一応、役所広司は剣の達人って設定になっていますが、
切った張ったのチャンバラも少ない。
 ラストのどわーっと手下に囲まれての殺陣も明らかに手下の数と
斬った数が合わないでしょ!!。
 黒澤さんのチャンバラ的な逃げるやつの描写もなかったし。

 それと、三人の親分が所払い程度で済むのも、丸く収める
町内会のボスの老人的解決法だと思いました。
 その程度なら、逆に稼業は完全に合法化のみにして
堀外をてめえらで治めちまえぐらい殿様の書状までごまかす
ぐらいなんだから、言ってもいいんじゃない。 かと

 とまぁ、全体的にハードな犯罪モノというか、無法地帯へ単身乗り込むって
映画や西部劇でありがちな設定ですけど、
 まぁまぁ、と丸く収めがちの日本の政治とかみているようで、
手ぬるすぎ。
 まず、誰も死んでないじゃんと、書きたいけど、
 一人死ぬ宇崎竜童ですけど、この人、回りが超ベテラン時代劇俳優に
囲まれてまして、まぁ変わった人少しは映画やドラマって出さないと
かちーんとした配役になってしまうのでアクセントで選ばれているんでしょうが、
歌と違い、台詞回しは声は出てないわ、滑舌は悪いわで下手なのが目立つ。
 まぁ、これはキャスティングなので置いといて、劇中ですけど、
普通あそこで、いい階段のロケなのに、役所広司と
バラされた宇崎竜童でチャンバラでしょ!。
 あそこは、一番怒りすら感じました。

 まぁ、知らないけど、年取って丸まった市川崑監督の
人生観が感じられる、ほのぼの時代劇でした。

 画面的ですけど、冒頭の今日も御奉行出仕なしって日記を
綴るシーンがあるでしょ、あの究極まで明度と彩度を落とした
カラーなのに、色の情報量を落とした映像こそ、市川崑さんが
晩年に行き着いた映像美です。かあちゃんは全編これでしたが、
 この作品だと、そこでタイトルが表示されぱっと明度と彩度が
戻ります。
 再三書いてますけど、今だと、AfterEffectでピューと
明度と彩度のスライダバーを動かせば済みますが、フィルムで
どうやっているかは、流石に不明。
 市川組だけのものすごいテクニックだとは思う。
 市川さんなりの一種の白黒へのオマージュだと思っていますけど。

関係記事。
かあちゃん

獄門島 

悪魔の手毬唄

犬神家の一族 1976 

隠し砦の三悪人

わが青春に悔いなし 

赤ひげ  

七人の侍 

用心棒 

切腹 

評価
☆☆☆ 
まったりしてていいじゃんという意見もあるとは思う。


 
 

5
hidden 

「隠し砦の三悪人」
監督・黒澤明
主演・三船敏郎

 超痛快戦国娯楽劇といったところでしょうか?。

 数多くの黒澤作品の中では、めちゃめちゃおもしろいんですよ、
それを再三断っておきますが、そんなに好きじゃない、、。
 なんかRPG的っていうか、実際そうやっていつもの脚本チームで
こういう難所に差し掛かったらどう切り抜けるとか、こうなったら
どうだとか、そんな感じでアイデア出し合って脚本を書いたそうですが、
 なんかゲームというか、ドラマって感じがしないんですね。

 それと、言われてみると晩年の影武者とか乱までないんだけど、
スペクタクル感がもう一つな気がするんだな。

 ただだけど、改めて見ると、めっちゃ面白いですね。

to SW
 このシーンから、G・ルーカスはSWのEpi4のタトゥーウィンでの
R2と3POの砂漠でのシーンを着想をって、ほとんどコピーですけど。
 千秋さん藤原さんどっちがR2でどっちが3POかは微妙だけど。

 結局別れた二人。


new R
 戦泥棒の追い剥ぎまでして鎧を手に入れた藤原さん。
コレをみるかぎり、新型のR2ユニットです。
この素っ裸に不似合いな鎧姿でひょこひょこ歩く姿を
笑わずにはいられないでしょう。

mob
 
 上記、書いたことと矛盾しますが、迫力満点のお城の大階段でのモブシーン。
 ここも脚本上まぁ、必要ですけど、
 この群衆シーンを大きな階段で戦艦ポチョムキンでしたっけ、
あんな感じで一回撮りたかった気がするんだな、、、。
 これが、序盤で三船さんが一切絡まずにこんなシークエンスを
入れるからやっぱり黒澤組の予算とか規模はすごい。

 すったもんだあって、金塊を持って姫様ごといかに
脱出するかのお話しに。

ride
 これも、すごいシーンですよね、、スタントなしなのではないでしょうか?
深く考えれば、刀なのでもう片手で手綱を握れば良いはずですが、
 この手綱なしで足だけで馬を御し、しかも危ない危ないほぼ全速力。
 見せ場です。

ride2
 そして、両者手練の全速力で疾駆する馬上でのちゃんばら。
追われる側は短槍なのでこちらも手綱は放してのちゃんばらとなります。
 今のカーチェイスに比べると、流石にカメラの移動が少なく
パンでの処理が多いですが、演ってる演者さんも含めてすごいです。
 
 ちょっと話が反れますが、昔の映画で車のシーンなんか車窓だけ
別個に写して合成とはちょっと違う不自然な乗車シーンをめっちゃ見ると
思いますが、あれも、車にすらカメラを当時載せられなかったのです。
 今なんかでも、ギリギリ乗車中の会話のシーンなんか車の窓
の端っこに乗せて撮ってますけど。
 カーアクションなんかだと、被写体もカメラも動きながらだと大八車
みたいなサイドバイクを使ったりしてますね。

spififhg

 そして、そのまま、勢い余ってというか、回り敵だらけなんだけど、
藤田進さんとの槍での殺陣。
 これも、あったようで少ないですよね。
藤田進さんも、まぁ東宝の看板俳優ということもあったでしょうが、
姿三四郎からわが青春に悔いなし と初期の黒澤組の看板主演俳優でした。
 藤田進さんと言えば、どこか優しそうな感じがするので、
日本でいちばん長い日 1967でも、利用される将校の役だし、
日本海大海戦でも、ちょっと失敗してしまった上村中将の役だったし
 ちょっと、弱いというか、失敗してしまう役が多い気がします。

fd
 そして、火まつり。この作品、音楽は佐藤勝という方です。
(知らない)
 これも、スペクタクルシーンですよね。モブで。

betray
 豪壮な藤田進さん。
 なんと、「裏切り御免」とは、、。
 あはは、痛快、痛快。

HE

 そして、デーンと見違えるほどかっこよく美しくなった
三人。
 多分ね、ここも、SWのEpi4のラストの叙勲式の
元ネタだと思うんだな、、。
 今回見て思いました。

 まぁ、徹底して娯楽側に振った作品ですよね。

 こんな名作に文句言ったらいけません。

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わが青春に悔いなし 

赤ひげ  

七人の侍 

日本でいちばん長い日 1967

用心棒 

評価
☆☆☆☆☆。
 

2
nomitori 

「のみとり侍」
監督・鶴橋康夫
主演・阿部寛/寺島しのぶ

 この監督「後妻業の女」の監督なんですね、、。
 そっちにほうが見たかったかも、、。
 元々原作があるらしいのですが、それを鶴橋監督自身が脚本化。
 ”のみとり侍”ってよくわからなかったのですが、要は売春夫です、男娼。
(これって、江戸時代本当に在ったの)
 とある失言で売春夫に見を貶された長岡藩士(阿部寛)の話しで
なんだろう?トヨエツはスカトロありでくるし、下ネタ満載の作品で
R指定がついています。 
 まぁ、映像的、内容的にいって致し方ないかと。
 丁度時代は過貨幣経済と賄賂が横行したものの商業的には栄えた
田沼意次の時代で、田沼を桂文枝が重低音で好演しています。 
 しかし、冒頭の登場シーンは良かったんだけど、最後近くの
科白が長く多くなると、ちょっとボロが出たかな、、。
 又、冒頭の藩主の松重さんの戯れ歌詠みのシーンの
読み方とか、独特で面白かったんだけど、、失速したかな、、、。

 まぁ、冒頭は、ちょっと変わったエロティック・ユーモア時代劇
みたいな感じで良かったんだけど、如何せん、色々入れ過ぎというか、
途中から、人情噺になるわ、為政者批判、権力者批判にもなるわ、で
 ちょっと色々入れすぎてなんか焦点がボケた感じ。
 決定的なのは、エロいのは、エロいんだけど、全体的なユーモアが
笑えないんだな、、。
 前田敦子の塩入のうどん粉は笑ったけど、、。

 これ、男娼ネタ一本で行ったら、良かったんじゃないかな、、と思うですが、
駄目ですか、、。品が下がって駄目かな。
 悪いけど、この脚本というか、監督さん笑いは才能ないと思うんだな、、。
 後、ラストのトヨエツの刀を使わない立ち回りも
面白いと、思ったけど、やっぱりチャンバラが少しほしいかな。

 基本、もう一つなんだな。

関係記事
12人の優しい日本人

評価
☆☆。

3
za 

「座頭市血笑旅」
監督・三隅研次
主演・勝新太郎

 座頭市シリーズ、第8作目。
 放送の関係は、日本映画専門チャンネルから流れてきたっぽい。
ただで、見せてもらって、こんなこと言ってはいけいない。↑

 市が、赤ん坊を連れて、色々なるってのが、メインプロットだけど、
映画や小説ではよくあるパターン。ナウシカでも、コミックだと、
赤ん坊を預かってて小さなEpiがありました。

 まぁ、ざっくり言ってしまうと、
座頭市も完璧な定形のプロダクションムーヴィーです。
いかに、基礎的な登場キャラが良く出来ていると、話を作っていけるか、
如実に証明している作品だと思う。
 本作は、シリーズの中でも、出来は真ん中の真ん中ぐらい、、
 わかんないけど、、。
 典型な典型みたいな感じ。
(といっても、筆者は、全作見てませのであしからず) 
前にも書いたかもしれないけど、足の悪い娘さんの出て来る市の師範
が出て来る作品がベストですね、、見た中では、、。
 女性のトップに高千穂ひづるさん、
敵役に金子信雄と出てきます。
 赤ん坊どうなるのって、思うと思いますが、いとも簡単にラスト解決します。
ラストの見どころの大殺陣ですが、、耳を封じれば、って
誰もが、思いつくパターンに行きつくのですが、
実は、火炎攻め。
 あれで、耳を封じたことになるのか、大いに疑問。
 どっかで、如実に太鼓どんどん鳴らして戦った殺陣も見たことあります。
 多分スタント使っていないと思うけど勝新さんに引火しての
殺陣が何カットも、、、。
 超人的な、居合斬りを見せた市に、
一番ラスト、盲人の旅の大集団とすれ違わせるんですが、
 切ないの一言。
 あんなにすごくても、市が一人の盲人でしかないことを
観客に突きつけます。
 たった数秒のシークエンスですが、狡いというか、
旨いというか、、、。
 これで、ドラマ性はぐっと観客の心に迫ります。

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座頭市血煙り街道 

座頭市喧嘩旅

評価
☆☆☆



3
fi 

「炎の城」
監督・加藤泰
主演・大川橋蔵

 NHKお得意の固め放送です。大川橋蔵シリーズ。
シェイクスピアの「ハムレット」を戦国時代に置き換えて、
瀬戸内海のとある大名という設定で映画化したものです。
 シェイクスピアの戦国Verというと、すぐ黒澤さんが思い浮かびますが、
黒澤さんだけの専売特許ではないみたい。

 オリジナルのハムレットより、大幅にエンタメ化されてて
はるかに面白くなってるんだけど、いかんせん、
オリジナルの「ハムレット」が持っている、おもしろなさを
残念ながらそっくりそのまんま受け継いでしまった感じ。
 というのは、私だけかもしれませんが、
あのハムレットがTo be or not  to beとことをおこすかどうか
悩み、だーっと状況を説明しながら、狂ったふりをしたりするところが
ハムレットの演者の最大の演じどころといいますか、あるんですけど、
あそこが、やっている役者さんは最大の見せ場、楽しいらしいんですが、
見ている側はちっと辛い。
 というか、親父をおじさんに謀反で殺された疑念があったとして
あんなにべらべら喋って、悩みますかね、、。
 まぁ、信長みたいに、おじさんにころされそうなので、無能な
振りぐらいは、流石にすると思うのですが、あんなあからさまに
狂ったふりをするのは、ちょっと嘘くさい。
 ただ、舞台だと、ナレ処理とかできないので、ああやって、
ハムレット一人でどわーっと喋るしかないとおもうのですが、
映画だと、あのへん、スッキリできなかったかと、、。

 それと、大幅にエンタメ化されていまして、ラスト、
大河内傳次郎の叔父さんとの天守閣での一騎打ちまで
ありますし、それと同時に、父親派といいますか、
旧勢力による領民を全員従えた一揆が起こり、
壮大な城攻めが展開されます。
 が、面白くなってきましたぁ、、、、と思ってたのですけど、
ここで、邦画独特の予算の制約といいますか、安っぽさが
出てしまい、一揆勢による大掛かりな城攻め、大戦闘モブシーンは
大手門をめぐる戦いのみに修練されています。
 まさに、残念、、。
 大幅にエンタメ化したところ、チープさが出てしまった模様です。
 藤原竜也のハムレット
(演出は大演出家、蜷川幸雄!!)
を結構我慢しながら、きっちり全部見た記憶が
あるのですが、いつもラストを思い出せない、、。
こんな革命みたいな一揆になるんでしたかね??。
 大川橋蔵と大河内傳次郎の天守閣での一騎打ちはいいですね、
めちゃめちゃわかりやすい。
 それに、大きなモブによる戦いとチャンバラの一騎打ちが同時に
おこるなど、SW方式です。

 オフィーリア役の雪野役の三田佳子さんがとても美しい。
異性マジックが働いているかもしれませんが、
MY 
この画像、一応、映画のタイトルも入れて検索したけど、
実際の画像かどうかは怪しい。他の作品の可能性があります。
 三田佳子さんは、私が、物心ついた頃から、もう
大御所の女優さんだったので、あんな若くて可憐な役
をやっておられるのが、まずびっくりだったので、、。
叔父さんの謀反に加担したその父親を大川橋蔵に
殺され、想っていた大川橋蔵もおかしくなってしまい、
入水してしまいます。
 ここも、ちょっと超乱世の戦国時代のタフな女からすれば、
考えがたいですが、ドラマ的には、いいですよね。
入水するシーンは、美しささえ感じます。
 
 夫を殺され、そのままその相手の女になってしまう、
母親は、高峰三枝子さんがやってて、金田一シリーズに続き、
続きと、いうか、こっちが前ですが、
もう母親役をやっているのかと、、、。納得したり、
残念だったり。
 
 エンタメ化したところ、安っぽさが出るとは、
思いもよらない映画でした。
 だけど、ハムレットのサワリというか、雰囲気を
つかむには、いいと思います。及第点ぐらい。

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この首一万石

犬神家の一族 1976

評価
まぁ、普通かな。
☆☆☆。 
 

5
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「この首一万石」
監督・伊藤大輔
主演・大川橋蔵

 私、世代的に大川橋蔵さんってもう一つピンときてなくて、
銭形平次の人らしいですね、、。ギリギリすれちがいぐらいで
見てないかもです。 
 というのも、うちの家は完全に東洋的価値観を捨ててたといいますか、
家族でとにかく洋画ばっかり見てましたから、TVの時代劇となると
とかく、疎い、、。

 一言、これ、名作です。ほんとうにすごい。

 これ、東映製作なんんですけど、
東映っていうと、最近はそうでもないですけど、
「ヤクザ映画というより、ヤクザが映画を作ってる」
とか、映画関係者、映画ファンには言われてまして
 でも相当そうらしい。黒澤さんで撮ることになっていた
「トラトラトラ」の企画でも、単身乗り込んでいった黒澤さんに
対して相当冷戦というか、すごかったらしい。
 (違う形で映画化されましたが)
 まあ黒澤さんサイドにも多分に理由があったそうですけど。

 といっても、70年代かギリギリ80年代までで
高倉健さんとか、任侠もののイメージだと思いますが
いつもなんですけど、視線が本当に低い。
 絶対鳥瞰や俯瞰した目線でファクトを描かない。
 まさに強きを挫き弱気を助ける、任侠の矜持。
 例え戦争映画を撮っても、兵士目線を絶対入れるでしょ。
 この辺は、逆に共感がめっちゃ持てる。
 だから、ヤクザっぽいとか言われるのかな、、。
 ただ、東映の時代劇だと新人の女優さんとか男優さんとか、
古株の結髪さんとか、衣装係の人にめっちゃイジメられるそうですけど。

 今作も、日雇い人足のお話です。まさに江戸時代底辺を生きる
人々のお話です。
 ごくごくかんたんに書くと、結婚のため武士の身分に憧れた人足が
武士のほんの小さなメンツのために詰め腹を切らされる。
 悲劇中の悲劇。

 これ、本当に脚本が良く出来ていてですね、、。
 構成といいますか、伏線、ネタフリ、タイミング最高です。
 私が最高と書いたのはですね、なんといっても、
 大川橋蔵さんのところに、肝心の揉める元となった槍が
届くタイミングが最高。
 そして、髻(もとどり)を切られた乱れ髪で練達の武士相手に
命がけの殺陣を展開するラスト!。
 この一連の殺陣、無声映画の頃の名作に「雄呂血」ってのが、バンツマさんの
映画であるんですが、乱れ髪もあって、それを思わせます。
 ちょっと武士サイドが弱すぎるかなって気もしますが、、。
 戦国の古来から、剣術って廻いが全てで槍に刀が勝てた
試しがないっていいますからね。
(残酷ですが、首を取るときだけ刀を使用したとかって説もあります)
 槍をもっていくときだけ、調子良かった、上方の大名の人足頭(にんそくかしら)も
そのあとは、へなーっとなっちゃうのは、ちょっとがっくりでしたが。
 どうせ、人足が居なければ、運べないんだから、ストみたいに
おっぽり出せば、と思うけど、違う人足衆をやとっておわりなんでしょうね。

 ただ、人権意識の薄弱だった近世ってこんな感じですよね。
 世の東西を問わず。
 西洋でも、長く、メンツや名誉をかけた決闘をずーっと
やってましたし、参勤交代の大名行列でも街道を譲る譲らないの
いつも大騒動になっていたっていいますから、、。
 
 これは、名作です。

 鑑賞されることを、絶対オススメします。

関係記事。
用心棒

「七人の侍」

評価
☆☆☆☆☆
 
 

5
syun 

「蠢動 -しゅんどう-」
監督・三上康雄
主演・平岳大

 本作の映画監督、三上さんの全く知らなかったのだけど、
この映画、マジで、すごい。 

 自身の「蠢動」という映画のセルフリメイクらしいんだけど、
これ、製作者も、多分、奥さんか、娘さんか、母親か、ご家族だと
思うのですが、早い話、これ、自主映画なんです。
 で、これだけのクオリティというか、
まぁ、岡本喜八さんも晩年は、ほぼ自主映画の感覚で、奥さんと
一緒になって資金繰りから、なにからやっていたらしくて、
日本の実写映画でも、自主映画ってよくきくのだけれど、
自主映画ということ割り引いてもすごいっす。
 だけど、ググるかぎり、あんまり、きっちり
リメイクした作品じゃなくて、オリジナルの80年代の
作品は見てませんが、スピリッツぐらいがカバーされてるぐらいで、
資金集めのスポンサーの関係上、「蠢動」とつけざるをえなかった
ぐらいではないのでしょうか、。
 岡田斗司夫さんも、「オネアミスの翼」のとき、いやいやバンダイビジュアルに
せまられて、オネアミスってつけたっていってたから。
(本当は、王立宇宙軍でいきたかったらしい)  

 ただね、この映画、早い話、こんな風に例えると、
いい意味で良くないのかもしれないけど、
まるまる藤沢周平の世界なんですよね。
 藤沢周平の藩も寒い、東北の海坂藩でしたっけ。
 キングのキャッスル・ロックみたいなもんです。
 それが、山陰の雪深い某藩になった感じ、とにかく、雪が寒そう、、。
袴の濡れ方が寒そう、、。
 武士像の捉え方とか、社会というか、組織における武士の
描き方とか、本当に藤沢ワールドそのまんまといってもいいかも。
 はっきり言って、目線が低くて、いつも全体のために虐げられる個
からの目線で描かれている感じです。
 あまりにも、藤沢ティストなのが、良い点でもありもう一つ独自色
がでなかった悪いとことかな、、。
 だけど、すごいです。自主制作映画として下駄を履かしてしまうのは、
いかがなものかとも思うけど、
これ、逆に、大資本とはいえないまでも邦画全体の予算が低いことの証明でも
あるし、アニメと同じ自由度が担保されているともいえますよね。
 まぁ、おうちが抵当に入るくらいで作っているのかもしれなくて、
相当、資金繰りは大変だったと思いますが、
 藤沢ティストって書きましたが、いつも思うのですが、
時代劇ってきっちり45分後に切り合いがあるドラマを除くと、
ほぼ、藩のお話ってそのまんま、日本人の社会状況というか、
会社だったり、学校だったり、近所だったり、日本人の村意識を
そのまま描かれててまさに身につまされる。
 よくローラの「大草原の小さな家」
のドラマがアメリカの現代劇に見えるように
時代劇から何一つ、精神性、日本人の心のありかたは、変わっていないんです。
 主演は、平岳大さんで、多分セリフも一番多いと思いますが、
個人的には、香川の弟ひろきのほうに、感情移入して見てました。
 あと、その香川のお姉さんにあたるさとう珠緒が、めっちゃいい。
 本人はバラエティで歳を感じさせぬぶりっこ天然キャラで
多分異性よ同性の反感をかっているでしょうが、
 演出一つでこんな魅力を引き出せるのだなぁと、感心した次第。
 めっちゃいいキャスティングと演出。
 家のせいというより、父親のせいで破談になり婚期をのがしたものの
弟の友人と結婚が決まってる、心配性のお姉さんで、
ほんの小さな石橋を渡るときに、無理から、その年下のいいなづけに
姉さん女房的に手を添えて、って手を引かせるんですよ、、、、。
 ああいうのって、女性するんですよ、、、。男性から言わせると。
 自分への愛を試すというか、自分がどれくらいに思われているか試すというか、
 まぁ、弟の友人なので、教えてやってるぐらいの感覚かもしれないけど
 あの演出はめっちゃ関心しました。

 めっちゃ持ち上げた、本作ですが、
 ただ、若干総合的な安っぽさが見え隠れするところが
多少ないわけでもない。
 これは、洋画と邦画の予算10倍の差と同じで、画角に
予算全部つぎ込んで作るんだから、どうしょうもないです。
 ただ、製作、脚本、監督までこなしている三上康雄に
 各映画会社やTV局の映像コンテンツ製作プロデューサーの方、
愛の手を、、、。

 ただ推測するに、こういう監督さんって、型にはまった
題材だと撮らないんでしょうね、、。
 評価、☆5つか4つかで迷う。

評価
☆☆☆☆☆。

 
 

5
yo 

「用心棒」
監督・黒澤明
主演・三船敏郎

 来ましたよ、、、年末NHKBSの映画マラソン。黒澤さんの
白黒時代の作品を特集してくれました。きゃー。
 ゴテゴテした、晩年の「乱」や、「影武者」も
けっこう本当は、これぐらいの規模で、合戦シーンを撮りたかったのだなって
感じで好きなんですけど、七人の侍の次って言われたらやっぱりこれだな、、。
 続編として、「椿三十郎」があるんだけど、こっちだな。
 というのはね、たぶんね、隠し砦の三悪人とかもそうなんだけど
 黒澤作品の脚本チームって徹底してアイデアを出し合って、
描き上げる分、コンゲームの要素がアイデアが出れば出るほど
その要素が強くなって、ちょっと娯楽性と相反する気がします。
 それと、ドラマ性と、まぁ、これくらい、いっぱい撮った人だから
特徴はそれぞれあると思うんだけど、、。
 エンタメ度とか、単純に「用心棒」のほうが、高いと思う。
「椿三十郎」ってはっきり言って、騙し合いのコンゲームで
あんなにうまく三船さんサイド&加山さん側にいくのかなって、
正直思っちゃう。
 まぁ、いい映画であることはまちがいないんですが、。
 リメイクも、森田監督なくなっちゃったのであんまり書きたくないけど、
多分イーストウッドの西部劇があるから遠慮したと思うけど、
こっちをやるべきでしょって、ずっと思ってた。

WS1 
 ジェリー藤尾さんに、後ろに本当にちらっとだけだけど、加藤武さんが出てる。

 加藤武さんって、時系列的には、前作の「悪い奴ほどよく眠る」では
よく出てたんだけど、それ以前は、死体役とか、殺される役で
笑っちゃう。蜘蛛巣城でも、殿様の番兵で槍で殺されてるし、
「隠し砦、、」では、実は、撮影中大事件が置きてて、冒頭のシーンで
よく言われる、C-3POとR2-D2にそっくりそのままパクられたシーンだけど
あそこで、騎馬兵に槍で突き殺される役。
 しかも、撮影中、騎馬兵に刺されるまではよかったらしいんだけど
馬が返してきたときに、普通馬って下の障害物、(死体役でも)
避ける習性があるそうなんですが、パカーンって思いっきり、
死体役の加藤武さんの頭部を蹄で蹴ったらしいんですね。
 それでも、死体なので動けない、加藤武さん、さすが文学座!。
 頭を馬に割られて大出血、そのまんま、撮影用の血糊とともに
病院に運ばれたそうですが、死体役でしょ、
 実際の血と血糊みて、医師が卒倒して倒れそうになったとか、、。
黒澤組での笑い話だそうです。

WS2
本作、よく、七人の侍 のときの、敵味方が入れ交わってて面白い。
野武士のかしら格だった、東野英治郎が、味方に加東大介が敵に。
仲代さん、若すぎ、今みたいな、オーバーな演技スタイルがまだ
確立されていません。
 
 単純に、悪いヤツしか出てこなくて、ノワール物としても
よく出来ていますよね。
 あと、映画製作方式というか、撮影の方式から言っても、
まるまる大きな通りを一本作って、野外シーンはそこでほぼ全部取りきっちゃう
西部劇スタイルで、どれくらい、西部劇を意識して製作していたのか、
わからないけど、これ、西部劇に似ている似てるって
言われるのって、撮影方法にもあると思うんですよ。
 どれくらい、意識したんでしょうね、、。存命なら聞きたい。
だけど、黒澤さん、Jフォードは大雑把な監督なようで
めちゃめちゃ認めてて好きなんですよね。
W6
 あと、この東野英治郎さんを吊り下げてるところなんかも、
時代劇というより、まるまる西部劇。しかも、なんと、掛けてるところが
神社の鳥居という、なんちゅー。
 ここのシーン、真冬の撮影で、風をそれこそ、大扇風機で
ビュービュー当てて、めちゃめちゃ寒かったらしい。
(当たり前だ)
 この画面にとにかく、風でも水でも、なんでも動かして、勢いをつけるのは、
黒澤さんの若い時、それこそ「姿三四郎」のころからの定番。
 白いペンキの中格闘をしたり、わが青春に悔いなしでも、
あの原節子さんを泥田に放り込んで撮影してる。
 そして七人の侍はご存知、土砂降り。付け加えるならあれも、
2月の真冬でエキストラがマジで寒そうにしてる。そこを三船さんは
胴丸一つにふんどし一丁。
 ちなみに、画面に動きつけたり、自然物で動きを強調するのは、
PVなんかでも演出法でよく利用されてますよね。
 それを戦前から、この人はやってます。

 時系列的には、下の画像のまえになりますが、
三船さんの入った棺桶を加東大介さんに運ばすところあるでしょ、
あそこは、ちょっとやり過ぎ。あんまり好きじゃない。

WS000003
カッケー。 
 加東大介さんのコミカルさのいかり肩もいいと思う。

WS000004
こっちも、カッケー、もうキレキレのセンスです。

 練習してるシーンがこの前にあるんだけど、
拳銃の仲代さんに対し、三船さんがなんか投げるとは、
一等最初から思ってましたけど、、。

WS000005
コミカルすぎる、加東大介さん。

 仲代さん曰く。
「あんまり、こっちに来るんじゃねえ!!」
 そりゃそうだろう、、。

WS000007
この、殺陣を見よ!。
 しかも、拳銃の的を外すため、すごいフェイントをかける三船さん、
カメラのコマに収まってなかったとか、言われるぐらいの動き、
(それは、椿三十郎での何十人も切った殺陣かな)
ダーティー・ハリーじゃないけど、何発仲代さんが
撃ったか数えました??。
 しかし、この殺陣は本当にすごい。本当に一人一人、リアルに斬って回ってる。
 
 そしてこの殺陣のあと、血糊付けて倒れている人のまま
のシーンの撮影がまた寒くて、そこを三船さんが慮ってたって
よく言われてます。
WS000000
 これも、めちゃめちゃ、リアル。
よく時代劇だと、全員申し合わせたように切り合いますが、
普通、逃げるやつって出てくると、思うんですよね。 
 一人、一人、忠誠心とか、戦意とか違うわけだし。
 しかも、これ、若き日の夏木陽介さん!。

 「水粥、啜っても生きていたかないか!」

 断然、コンゲームの「椿三十郎」より、「用心棒」のほうが、好き!。

関係記事。
わが青春に悔いなし

赤ひげ

「七人の侍」

評価
☆☆☆☆☆。
☆5つは当たり前田のクラッカー。


 
 

3
topima 

「かあちゃん」
監督・市川崑
主演・岸恵子

 もう平成になっているし、この映画が制作されたのも、
平成なので、あんまり適切な表現じゃないけど、
 筆者的に、昭和の三大時代小説作家がいます。
 正確には"戦後の"かな、、。
 池波正太郎、藤沢周平、山本周五郎。 
 そして、多分、戦後の高度経済成長を支えた、いわゆる会社員
に読まれてきたのも、この三人かな、、。
 多分、時代小説に歴史小説も入れると、司馬さんがなんではいっていない
とか、隆慶一郎は、とかなると思うけど、
 まぁ、この三人がビッグ・スリーなことは間違いないでしょう。
 ドラマも含めて、映像化されたのも、この三人が格段の本数
を数えるのではないのでしょうか、、。
 しかし、筆者、この最初の二人は、めっちゃ読んでて、
作風とか、考え方とか、まで大体わかるんですが、山本周五郎だけは、
読んだの「樅ノ木は残った」だけで、これ、山本周五郎作品群の中でも、
結構イレギュラーな作品とか、言われれてるので、結局、
あんまり、山本周五郎だけ傾向がわかりません。
 筆者的に、映像化されたものの筋運びとか、人物描写から
見て、山本周五郎って究極の人情噺といいますか、
それが、めっちゃ得意な人って感じ、、。
 Wikiなんかだとだーっと小説のタイトルが並ぶのかな、、なんて
思ってると、そうでもないんですよね。
 意外と、寡作なの、、、、?。

 池波さんは、エンタメ、アンド、コンスピラシー系、この人、
意外と思われるかもしれないけど、鬼平とかでも、基本、ヒューミントの
スパイ小説に近い感じなんですよね、、私に言わせると。
  
 んで、藤沢さんは、ね、多分異論あると思うけど、この三人のなかでは、
一番文学性が高い。
 んで、切れ味鋭い感じ?。あのね、海外のハードボイルドの影響
も感じます。特に、レイモンド・チャンドラーね。
 で、単純な人情モノというより、ものすごい世間とか人生の冷たさ
みたいなものを描きつつ、人が持っている恨みとか妬みとか、
わりとダークサイドもエンタメや人情噺に上手く昇華させてますね。

 で、山本さんですが、一番読めてないのに書かせてもらうと、
一番、通俗。池波さんを置いて、通俗ってないと思うけど、
逆に、庶民の心意気とか、ど根性とか、本当に、
フツーに読んで共感できる一市井の生き方みたいな
ものを教えてくれる気がします。
 で、家老を描いてる「樅ノ木は残った」はイレギュラーだと
いう理論です。

 ものすごい、脱線したけど、閑話休題。
 
 その山本周五郎を原作に市川崑が岸恵子と
撮ったのが、本作。
 もう市川崑独特の、ぬぼーっとして、彩度と明度を極限まで落とした
絵作りは完成の域に達しております。
 この画面はもう芸術の域ですね。
多分、国から、褒章とか貰われると思いますが、、。
今だったら、photoshopで動画は扱えませんが、デジタルで撮って
彩度と明度のレベル補正したら(premiereですかね)簡単に
できそうな気もしますが、多分、フィルムに照明の当て方、
現像と、全部が揃って、市川崑のこのカラーなのに、白黒みたいな
映像が出来上がっている気がします。
 なんか、PVみたいになると思うけど、ここに、一色だけ、
宮川さんの赤みたいに、一色だけ、綺麗に彩度を上げて発色させると、
 いいとか、素人的には、思うけど、これ、岸さんへの配慮とか
もあったんですかね。
 話は、全然変わりますがアニメ界の巨匠押井守が、
いつも思うんだけど、この市川崑の晩年の絵作りに彩度と明度に
関しては、似てると思うんですよ。
 押井に言わせると、画面の情報量を落としたいって言ってますけど、。

 お話しは、究極の人情噺、、悪い人が一切出てこない。
どんなに辛い現実があっても、ポジティヴに良いことだけしてたら、
こんなに楽しく暮らせるよ、、とまるで、
なにかの宗教の教えのようなお話です。
 このお話しそのものが、救いそのもの、みたいな感じ。
 宗教に救いを求めるより、この映画を見たほうが救いが見いだせるかも。
 
 これ、実は、家族みんな血がつながっていないとかだったら、
面白かもとか思いますが、駄目ですかね。
 
 これね、筆者が一番思ったのは、大体、監督って
主演女優って自分の好きなタイプの人なので、
(そのまんま結婚ってめっちゃ多いでしょ)
 市川崑から、岸恵子への最後のラブレターだと思うんですよ。
市川崑といえば、岸恵子って感じがめっちゃ強いですが、ググると
そうでもないんですよね、名作「おとうと」の
印象がめっちゃ強いんでしょうね、、。
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 また、脱線しますが、この「おとうと」も銀サラシでしたっけ、
画面がざらっとした感じに仕上がるのですが、それにトライされてて
それを、最近は、そうでもないのかな、「プライベート・ライアン」の
ころのスピルバーグが凝ってまして、めっちゃ似てます。
 って、おんなじ撮影法か、現像方なので当たり前ですが、
 ちょっと変わった、質感が画面にできます。
 だけど、一定レベルを保つのはめっちゃ難しいそうですが。
 スピルバーグって私に言わせると、あんまり凝って作るタイプじゃないので、
もう完全にそういう画作りはしていません。

 脱線の連続ですが、何が言いたかったかといいますと、
最初は、ずーっとこの役への岸恵子さんの配役がめっちゃ違和感
がありました。だってパリ在住とか、洋風な感じの顔の女優さんでしょ。
 はっきり言って、ラブレターだとか、思わければ、ミスキャストですよ。
 それが、コテコテの長屋の子沢山のケチンボお母さんって、。
 まず、子沢山に見えない。ケチンボには見えるか、、。(すいませねん)
 台詞回しもそんなに旨いわけでもないし、、。

 でも、偉いもんですね、これが、年輪とかベテランの味かもしれませんが、
長く生きてきた人の、迫力とか存在感でしょうか、
映画終盤には、その違和感が消えてる。 
 この母親でなければ、こうならなかったとさえ、思えてくる、。
 ハリウッドも、美しいとか、演技とかより、存在感重視で俳優を
選んでるとかいいますからね、、。

 ただ、面白いかと言われると、ちょっとダウト、、。
 だけど、見終わった感は、めっちゃいい。泣きそうになります。

関係記事。
山本周五郎といえば、これ
赤ひげ 

獄門島

悪魔の手毬唄

犬神家の一族 1976

評価
☆☆☆。めっちゃいい話ですが、
可もなく、不可もなくって感じ。

3
zake

「座頭市喧嘩旅」
監督・安田公義
主演・勝新太郎

 映画、座頭市シリーズとしては、5作目にあたり、1963年の作品です。
座頭市シリーズも、色々みて、映画だけでも、どれをみて、
どれ見てないか、定かではありません(ちゃんと憶えてますが)。

 そろそろ、マンネリズムが出た始めた頃だと思いますが、
出来としては、シリーズの中でも、まぁ、真ん中あたりかな、、。
 可もなく不可のなくと言った感じですかね、、。

 座頭市って関八州を回ってて、旅烏、流れ者だし、
エピソードは作りやすいと思うんですよ。
 でも、まぁ、これも、典型的なプロダクションムービーですよね。

 これ、ググって、知ったのですが、音楽は、ゴジラの伊福部昭です。

 女優さんは藤村志保に藤原礼子の二枚体勢、
4b214761
 藤原礼子さん。

 藤村志保さんって
大河でしたか、おねの役をして良妻賢母のイメージが強いですが、
本作では、大店のお嬢さん役。まだ、若くて、おぼこいといいますか、
めっちゃ美しいです。
美しいというより、人形のようで、かわいい。
 街道で、二大ヤクザの喧嘩に巻き込まれます。
 
 シリーズ中、時々目の不自由な市に対して
心配りや心遣いをみせるヤクザが出てくるのですが、
いいですね、、。本作でも登場します。
  
 映画に使用された、いいエピソードが、少し、簡略化されて、
TVドラマのシリーズで使用されたりもしています。
 忘れてしまいましたが、市の剣術の師範で足の悪いお嬢さんが出てくる話でしたか、。

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不知火検校 

座頭市血煙り街道 

評価
☆☆☆。


5
tiyari 

「血槍富士」
監督・内田吐夢
主演・片岡千恵蔵

 これ、サイコー。最初は、ちょっと退屈かな、なんて、思ったけど、
ラストまで観たら、全然違った!!。
 正に脚本の勝利!!。

 よくよくググると、これ、アメリカの「駅馬車」みたいな
日本映画界内のリメイクらしいですね、、。 
 それで、原作付きに表記されていますが、
それにしても、恐ろしいほどの脚本の出来です。

 簡単に書くと、とあるって、遠州の東海道みたいですが、
そこの街道沿いと宿場町での出来事を描いた、群像劇。 
 それこそ、江戸時代らしい多種多様な階級の人々、老若男女が
登場し、話を展開していきます。
 
 しかし、これだけ、よくしかもうまく、
話を上手に絡められるものですね、、。 
一瞬の無駄な伏線や、絡みもない、全てが有機的に重複することもなく
絡んでいます。
 これは、正に、見事の一言。すごいな、昔の日本映画の
時代劇は、。

 あと、大名の野立てのシーンがあるのですが、しかし、
街道で往来を止めての野立てです。
 この辺も、体勢批判か、、。
 注目すべきは、この富士山のシーン、なんとマットペインティングです。 
 やっぱり雲待ちとか天気待ちとか、するのは、黒澤さんぐらいか、。
「黄色いハンカチ」では、山田さんも青空を待ちに待ったそうですが。 

 ネタバレですので鑑賞の予定のある方は、
もちろん、読まないでほしいのですが、
 これ、月形龍之介さんのEpiで終わってたら、よくある
人情話で、終わっていたと思うんですよ、、。
 本当に、良かったよかったでね、、。
 しかも、このEpiで神君家康公より給ひしの槍が安物だった
とかいう、当時からしたら体勢批判的なEpiも入っている。

 ところが、もう一本もちろん、片岡千恵蔵さんが主役なのだから、
ありました。しかも壮烈なやつが。
 全然人情話ではない、。

 まぁ、群像劇でありながら、二時間切っているし、無駄な挿話
なんて一切ないしで、
 日本映画の名作中の名作だと思います。
 脚本の勉強なんかにはもってこいですね。
 是非もなく、機会があれば、ご鑑賞ください。

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「七人の侍」

「新撰組 1958」

「【新企画】二大大型時代劇映画「忠臣蔵1958」「赤穂浪士1961」を見比べてみた」

評価
☆☆☆☆☆ 満点っす。

5
redb 

「赤ひげ」
監督・黒澤明
主演・三船敏郎

 今まで、なんとなく、あんまり切った張ったの要素が少なそうで
黒澤作品でも避けていたのですが、
 今回見てみたら、めちゃめちゃフィット。
 しみじみいい映画ですね、、。
 ただ映画の脚本としての構成は、脚本家養成道場としては、減点物ですね、
3つの短編をくっつけただけ。
 だからどうだという気はありませんが、。

 素晴らしい人情噺の連続といった感じ。
 全Epiすばらしいのですが、中でも、最後に見ることになる、
少女期の二木てるみさんをフィーチャーした、最後のEpiが秀逸。
おとよと、呼ばれる、存在感といい二木てるみさんの演技が素晴らしすぎますね、、。
この後、女優業はもちろん、
朗読とか、アニメの声優の仕事(たしか、オスカル?)などもやられていたみたいですが、、。
 また、この二木てるみさんを取り返しに来た、杉村春子さんの演技にも脱帽。
超早口の台詞回しが素晴らしいの一言。「用心棒」の山田五十鈴さんのすごかったけど、
この杉村春子さんの台詞回しは本当にすごい。
 
 黒映画にとっては、三船さんとのお別れの作品。
香川京子さんの永遠の美しさから「天国と地獄」と私、順番間違っていましたが、
今回、鑑賞してきっちり訂正。
 一応、歳はとれども三船さんの岡場所での
素手での殺陣もあるんですよね。
 散々相手をやっつけた後で、「これはひどい」とか「これはよくない」とか、
言って顎を治してやったりするのも、どっか笑っちゃう。
 この作品は、実は、黒澤さん、三船さんとの決別だけでなく、
モノクロとの決別でもありました。

 カラーもしくは、総天然色(昔はこういったんですね)
になり、画作りが絵画的になり超オーバー・ディレクティングの
黒澤さんんの良さがよりよく出るかと思いきや、
「どですかでん」では、もう何週もしたのか完全に停滞したかな、、、、。
 この辺から、東映での「トラトラトラ」の企画倒れや
黒澤さんと世間との真の評価と苦闘が始まります。
 確か、最後のEpiの長坊が、どですかでんのどですかでんなんじゃなかったでしたっけ?
まちがっていたらすいません。

 絵作りはともかく脚本としては、実は医療モノも戦争映画と同じく
ズルい題材の一つです。
 あるベテランの先生が新人の医師や看護師にいうそうですが、
君たちは一番いい場所にやってきたと、ここ(病院)は人の苦しみの
すべてがあるところだとそれを見られる職場などそうはない、、と。
 まるで、映画の台詞じゃありませんか、、。
 そこまで、病院というものをフィーチャーした映画ではありませんが、
 誰もが感動し、心揺り動かされる事間違い無しの人情話の
連続に降参するばかりでした。

 老けた、椿三十郎なんかみたいくないや、とか言わず、
見てほしい一作です。

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「七人の侍」

☆☆☆☆☆。
 
  

4
bushi_no_ichibun 

「武士の一分」
監督・山田洋次
主演・木村拓哉

 藤沢原作を、山田洋次で映画化した三部作のラストを飾る作品。
いま、山田洋次は、橋爪功や吉行和子を主演に
「家族は辛いよ」シリーズを撮っています。
 藤沢ティストと山田洋次ティストは若干違うと以前書きましたが、
 これが、一番合致したかも、、。
 というのは、これが、三部作中一番シリアスだったから、、。

 檀れいはともかく、木村拓哉って一人ゲッチュとか言ったり、どっか
目立とうとか、カッコつけようとする傾向がなんとなく透けて見えて
あんまり好きでなかったのですが、
 これは山田洋次が演出で抑えに抑えにまくったのか
 アドリブ的な目立ちがあまりなく、自然に見られてよかったから。

 そして、相変わらず、山田洋次は殺陣に興味があまりないことを
再認識。
 「たそがれ、、」は二つ原作を合わせたり、小太刀だったり、
 二作目は書けないけど、、時代劇的に普通に殺陣を見せずに
一捻りしてこだわっているのだから、
 その辺、原作に合わせてほしかったな、、。
 山田洋次ってやっぱり殴り合いとか殺し合いとか、バイオレンスな要素は
排除する傾向にあるんですね、、、。
 これも、短編からおこしているせいか、冗長な演出に
色々感じるんだけれど、
 ああぁ、ここは、脚本で足してるなぁとか、思うこと。
 どうしてかわからないけど三作の中では一番シリアスに
感じられた、、。体調が逆に悪かったのかな、、。
 コメディリリーフが「隠し剣 鬼の爪」に比べると少なかったからかもしれませんが、、。
 
 殺陣にこだわるようですが、これ、座頭市なんですよ、、。
 もうちょっと殺陣が見たかったいうか、
 もう一捻りして、やっつけてほしかったなぁ、、、。
 そこが残念。
 飯炊き女のは、ソッコー気づきましたよ。
 あれは、ちょっとイージーすぎ。

 それと、もう一つ、しょーもないツッコミを、、
一応、バレてないことになってますが、武士って浪人でない限り、
藩に雇われている限り、私怨私闘は禁じられているはずなんですが、、。
藤沢さんが知らないはずはないし、
 原作ではどう処理されているのか、気になります。
 
 でも、家族は辛いよじゃないですが、夫婦って一山も二山も切り合い
なんかせずともあってあたりまえなんですけどね。 
  
 海坂藩って東北のどこの設定か知りませんが、
"せば"と"がんす"を覚えました。

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「隠し剣 鬼の爪」

☆☆☆☆

5
7

「七人の侍」
監督・黒澤明
主演・三船敏郎

 日本映画の一つの、到達点ですね、、、。
 いや、世界映画史でも多分埋もれることなく記載されるでしょう。
 黒澤さんがすごいのは、これだけにとどまらず、
若い頃から、ドラマと絵作り、音楽にもけっこうこだわってますが、
いわゆる映画、ドラマツルギーで見せる映像表現というものを
娯楽作品としても、質の高いものを提供をしようとしたことが
伺えます。
 これ、私なんかが、テレテレ書くより、高名な方の読むか
前知識無しで、どかーんと見て、衝撃を受けてください。
黒澤作品ってけっこう配役固まっているので、
こういう使い方してるのかとか、見るほど思いますが、
 これだけは、そんなの関係ないですね。
 雲待ちしたり、家一軒こわしたりとか、撮影にはいろんなEpiがありますが
 それだけ、一切妥協しなくてアイアン・ジムと呼ばれた、
ジム・キャメロンと同じく、映画に対して真摯に取り組み妥協しなかったということです。
又、これを支えたのが、なんとハリウッドスタイルで
徹底的にスタジオ、プロデューサーサイドでコントロールする
東宝だったてのもある意味皮肉です。
あの東宝でさえ、黒澤さんには好き放題させたというほうが正確なのかもしれません。
 改めて、みて思うのは、結局のところ、
 リアルさとドラマですね、、。

  個人的なこと書かせてもらうと、これで何回目見たことになるのだろう、、。
一番最初は、高校生でまだシネコンのない時代に
生誕のアニバーサリーかなんかで、中規模のロードショー型の映画館で
ディレクターズカットの一番長いやつを見たんですね。
トーキーとか悪くて、何言っているのかわからないところも
あったけど、とにかくすごかったのだけは、覚えてますね、、。
映画から受ける衝撃という意味では、高校生ぐらいでみたのがよかったのかも、、。
 当時は、やっぱり木村功さんじゃないけど、久蔵の宮口精二さんに憧れたなぁ、、。 

 うちの親父は、ジョン・スタ―ジェスの大ファンで荒野の七人を
わんわん私に言ってましたが、比較にならないですよ。
 そこから、翻って、「マグニフィセントセブン」も見てないけど、、。

 書き出すと止まらないので、何も書きません。

☆☆☆☆☆

3
ka 

「隠し剣 鬼の爪」
監督・山田洋次
主演・永瀬正敏

 藤沢周平原作、山田洋次監督の時代劇シリーズ第二弾。
「たそがれ清兵衛」がそこそこ成功したので、企画が通ったのかな?。
映画「たそがれ清兵衛」の話聞いた時、あぁ、山田洋次と藤沢周平の
組み合わせがあったか、、て思ったもん。
 どの辺からの企画か知りませんが、いいところ目をつけるなぁって
思ったもん。
 私も藤沢周平さんの大ファンで、あの著作量なので
もちろんコンプリなんて出来てませんが、
 山本周五郎さんとか、池波さんよりは、断然藤沢さんの
のほうが、好きですね。ちょい文学度もこの二人よりは高いと思うし。
イメージとしては、山本周五郎は黒澤さん、池波さんは梅安も含めて東映かな。
 実は、藤沢さんって山田洋次さんが映画化するように
私より、私の父親の世代なんですよね、、。
 最初は、父親からあれ読め、これ読んだかとか、
司令を受けてたもん。
 でも、多分今では単純に読んだ作品やページ数ではサブカル好きの私が
父親より勝ってますが。

 ただ、私に言わせると、「たそがれ、、」の時も
思ったんだけど、藤沢ティストからするとちょっと山田洋次ティストと
違うんですよね。
 藤沢さんって、HB(ハードボイルド)とかわりと短文で、
山田洋次ほど、ユーモアが入る余裕がない。
 マジ、めっちゃ落ち込むぐらい、厳しい作風です。
 だから、違和感感じる、視聴者、ファンも居ると思う。

 
「たそがれ、、」から放送されていたんだけど「たそがれ、、は
まえ見てたので、意図的にパス。
 「たそがれ、、」は、最初ということもあって、大分
山田洋次も力んでるのがわかるし、おもしろいけど、星的には4つかな、。
可もなく不可もなくみたいな、、。
 まえがきが長くなりましたが、

 本作「隠し剣鬼の爪」ですが、、。
 山田洋次にも少し時代劇そのものというか、
藤沢作品の映像化に対して余裕ができた感じ。 
 全体的に、丁寧に撮っているんだけど、各シーン、少し冗長的な感じがします。
 んで、相変わらず、松田くんのコミックリリースは滑りまくっています。
「もののけ」のアシタカですよ、。
 また、男はつらいよ、、からの吉岡も出ているのですが、
北の国からも好きなんだけど、この人、リアルなのかもしれないけど、
台詞回しが決定的にささやきで、下手なんですよね、、。
ファンの人ごめんなさい。
 女優陣トップの松たか子ですが、おみそれしました。
「告白」のときも思ったのですが、女優としてリアルタイムではなんとも
思ってませんでしたが、
 こうやって見ると、綺麗ですね、、、。(今頃、、)
 ちょっとお姉さんと親父さんの顔があまりにもちらつきますが、、。

 それと、あとで、書くと思いますが、山田洋次ってあんまり
殺陣に興味ないですね、、。
 いや、ラストへの重要な伏線もあるのですが、
 時代劇における殺陣そのものに興味がほぼないのが、
ありありと感じられます。

 ラストは、おおっと思わせたし
 隠し剣とこのハッピエンディングは好きなのですが、
 全体としては、冗長で星3つかな、、。

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「告白」

☆☆☆。

2
sin 
「新選組」
監督・佐々木康
主演・片岡千恵蔵

 NHKBSドラマ「新徴組」に合わせた番宣代わりの
映画だと思います。
 東映が製作した、片岡千恵蔵主演の「新選組」です。
 いわゆる娯楽大作でして、歴史的には、めちゃくちゃです。
 鞍馬天狗のおじさんは出てくるわ、
 実在の人物かと思っていましたが、
関兵庫なる架空の新選組にとって裏切り者も出てきます。
 なんか、色々あった結果、池田屋の切り込みに話を持っていって
帳尻を合わせた感じ。
 「蒲田行進曲」でもありましたが、
池田屋での切込みに際し、階段落ちがないと
邦画としては、終えられない感じですね。

 突っ込みどころは、たくさんあるのですが、
 なんか、ごまかされた感いっぱいでラストを迎えます。
 先ず、片岡千恵蔵が、俳優、片岡千恵蔵としての存在感ありすぎて、
近藤勇に見えない、、。
 ジャック・ニコルソンみたいな感じ。
 キャラ的には、山形勲が演じてた、土方さんのほうが、
怒鳴ったり、厳しい尋問したり、剣舞したりでキャラ立ちしてました。
 大石内蔵助をしてる片岡千恵蔵さんはよかったのですがね、、。
 近藤勇には見えなかったです。
 というのも、やっぱり鞍馬天狗とかでてくるからでしょうかね。
 それと、池田屋での階段落ちもあるものの、
どてんと二三段落ちる程度で、えって感じでした。 
 ちょっとしょぼい。

 この映画での佐幕派の近藤勇さんの錦の御旗は
公武合体でして、公武合体を散々言いまくっていました。
 
 鞍馬天狗もいいものとしてだして、
 新選組も出すのは、無理ですね、、。脚本というか
構成上の限界を感じました。
 でも、映画としてのリッチ感で最後まではどうにか見れました。

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☆☆。

5
sira 

「不知火検校」
監督・森一生
主演・勝新太郎

 すごい、すごいって聞いていたけど、
本当にすごい作品です。
 「座頭市」の二年前に作られた作品で、
座頭市の原型とか言われたりしていますが、
そんなもんじゃないですね。
 これ、基本はピカレスク・ロマンです。
その手法に則っていて最終的に因果応報で
この悪行三昧の盲目の主人公がボコボコにされるまで描いている。
 描いている、テーマなんかは違いますが、ピカレスクもの
としては、
「明日に向かって撃て」とか「俺達に明日はない」とかと、
構造は一緒です。悪いことしまくって、最後はぼろぼろになる。
 まぁ、この辺、こうなることで、当価値交換といいますか、
ハリウッドでも日本でも観客が納得するんでしょうね。
 また、ある程度主人公に感情移入してみているわけだから、
そこまでやることはないんじゃないと
ごく少量でしょうが、同情も買える。
 この主人公。幼い頃から盲目、家族にも恵まれていません。
 しかし、自身の目の見えないことすら利用して
まさに悪行三昧。良心の欠片、呵責はないのかといいたいぐらいの
まさに悪いやつ。
 これ、もしもこの男が障害者でなければ観客が感情移入 することは
無理でしょう。
 脚本家は、相当苦労したはず。
 ここで、これまた、障害者という重く難しいテーマが
映画そのものに降り掛かってくるのですが、
 やっぱり障害者は可愛そうなのか、
なにか悪いことや普通の人がしないことをしても許されるのか
観客は許して、見続けていいのかという
という問いかけが、この杉の市が悪行をするたびに
 問われ続けるのです。


ネタバレ


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 そして、最後、全てが露見し、検校という、
盲人の最高位に上り詰めながら、捕縛され、
往来で礫を投げつけられるまでに至ります。
 これで、納得なのでしょうか、、。
 悪いことや、ずるいことをしたことが一切ない人はいないと思います。
私は、多分一般の人より性悪説にたっているので、
 そう思っているだけなのかもしれませんが。
 世の中、本当に因果応報で、きちっと、
悪いことをした分だけ、応報を受けているのでしょうか。
 又、主人公が障害者だということがどうにも
こうにも関わってきます。

 テーマ性なんかは、座頭市よりこっちのほうが
上です。
 だって、座頭市は、基本いい人ですから。
 マジで、重い映画、感想や評論なんて出来ない。
いや、みんなで語る尽くすべき映画だ。

☆☆☆☆☆
  

5
se 

「切腹」
監督・小林正樹
主演・仲代達矢

 話は、ずれますが、本作と同じ小林監督が撮った「人間の條件」
 の大ファンでして、これ、本当にすごかった。
 原作ともども世代で言うとうちの父親ぐらいがリアルタイムの作品なんですが、
父親に薦められるまま見たら、これがすごい作品でして、全6部で9時間近くある
超大作です。製作のかかった日数も相当で、途中で仲代さんに
 俺も変わっただろうという科白があるほど一人の役者の人生の変遷まで
つぎ込んだ作品です。
 もちろん五味川さんの原作も大変素晴らしく、
映画が原作に負けず劣らず、きっちり制作されているといったところでしょうか、、。
 で、いつだったか忘れましたが、同じ監督だということで、
一回ちらっと途中から本作を見たんですね、
そしたら面白くてやめられない。
 それで、今回、きっちり拝見させてもらったら、すごい名作でした。

 本作は、小林正樹監督が、一連の「人間の條件」シリーズを撮り終えた後
の次の次に当たる作品で、初の時代劇だとか。
 冷徹なまでの悲劇作品をモノクロの綺麗な濃淡で描ききるこの監督が、
撮るのだから、ある意味究極の悲劇です。
 また、「人間の條件」でも、会社組織、軍隊組織。の非情さをかっちり
描いていただけあり、本作でも、ある意味時代としては、現代でなく近世なのですが、
(近世初期というべきかもしれません)
武士組織の非情さ、非合理を真正面から描いた作品です。
日本の誇りや誉みたいに言われるサムライという存在そのものを
暗黒面から描いた作品とも言えるでしょう。
 土台、切腹という武士の作法そのものが非人道的なのだから
かくあり、なのかもしれません。
 でも、一応本作原作が存在するんですね、、。
知りませんでした。 
 そして、構成そのものは、軽いミステリ仕立てになっていて
脚本の後世の素晴らしさも伺えます。
 又、ラストもすごい、これだけ切った張ったがありながら、
結局なんにもなかったことにしてしまうのです。
 この辺、人の社会の裏というか、業をよく見ている人だな、、と。

 小林監督の趣向なのかもしれませんが、井伊家の屋敷は
考証どおり純日本風なのですが、困窮していた千々岩のや屋敷が
どこか、中国風なセットなのは人間の條件の影響なのでしょうか、、。
 ちょっと変なティストになっております。
 
 本作、その非人道的な切腹がさらに非人道的に行われたということで、
仲代さんの超ブチ切れ作品となっております。
 実は、「人間の條件」でも軍隊の内務班のいじめに仲代さんがブチ切れる
シーンがあるのですが、それを時代を江戸時代初期に
持って行った感じ。
 そしてそのぶちギレ方が壮大な井伊家屋敷内での迫真の殺陣となりエンタメとして
成立しているというめちゃめちゃよく出来た映画です。
 
 小林監督は、松竹の人らしいですが、
芸術性の松竹とはよく言ったものの、ほのぼのした庶民のドラマを描く大船調なんて
うそうですね、。超強烈な映画です。
 こんなことがあっていいのか、許されるのか、といった怒りを同じ人間社会として
持ちます。

2
za 

「座頭市血煙り街道」
監督・三隅研次
主演・勝新太郎

 どの辺から、一連の座頭市シリーズを意識するになったのか
忘れましたが、最近になります。もちろん、北野監督のリメイクとかも
見たし、オリジナルの第一作の「座頭市」も見たのですが、
TVドラマだと一番最初のシリーズは本当にどこをとってもというか、最高ですね。
筋立て、カット割り。絵作り。キャスティングすべてドラマとは思えない
出来栄えです。
 シリーズを重ねるごとに少しづつ型落ちになっていくのが、悲しくてなりません。

 本作は、数えるのも大変でしたが、映画座頭市シリーズの16作目にあたります。
1967年製作。
 近衛十四郎と共演が話題となったらしい。

 これも、全然見ていないし、全く智識がないのですが、座頭市もすごいのですが、
本当は、この前に製作された「不知火検校」という作品が、本当は、すごいらしい。
全然知らないので、めちゃめちゃ興味があります。

 この座頭市シリーズっていつも考えるんですが、面白さって
どこらへんにあるんでしょうね、、?。
 テレビシリーズを演出した、とある演出家は、勝さんが杖をついて
あるいているのを撮っているだけで画になるって言っていました。
キャラクターとしては、どうでしょう。
 盲目のはずなのに恐るべき、剣の使い手だという
ところか、庶民的で完全な弱者でありながら弱気を助け、
しかも、ちょっと悪い、市のキャラクターなのか、
 これって、障害者団体から怒られるの覚悟で書きますが、
市って名も無き観客みんななんじゃないでしょうか。
 市はよくおてんとさまって言っていますが それこそ、程度の差なんていうと、
障害者団体に怒られるでしょうが、みんなハンディキャップを持っています。
完全無欠な人なんていないでしょう。
 また、常に清く正しく生きている人なんていないでしょう。
またこの世の中がそうじゃないこともみんな重々承知しているんじゃないでしょうか。
 そこら辺から市にものすごく感情移入するのではないでしょうか、、。

 で、本作ですが、個人的には、もう一つかな、、。
それは、もっと面白い座頭市の作品を知っているから、、、。
 映画座頭市ではラスト切りたくない剣客しかも結核に冒されている剣客との
斬り合いが見せ場なのですが、
今作の近衛十四郎との殺陣も素晴らしいのですが、近衛十四郎を敵に回さない微妙な
配慮といいますか、微妙なところで終わります。
 これがちょっとね、、。

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