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「この首一万石」
監督・伊藤大輔
主演・大川橋蔵

 私、世代的に大川橋蔵さんってもう一つピンときてなくて、
銭形平次の人らしいですね、、。ギリギリすれちがいぐらいで
見てないかもです。 
 というのも、うちの家は完全に東洋的価値観を捨ててたといいますか、
家族でとにかく洋画ばっかり見てましたから、TVの時代劇となると
とかく、疎い、、。

 一言、これ、名作です。ほんとうにすごい。

 これ、東映製作なんんですけど、
東映っていうと、最近はそうでもないですけど、
「ヤクザ映画というより、ヤクザが映画を作ってる」
とか、映画関係者、映画ファンには言われてまして
 でも相当そうらしい。黒澤さんで撮ることになっていた
「トラトラトラ」の企画でも、単身乗り込んでいった黒澤さんに
対して相当冷戦というか、すごかったらしい。
 (違う形で映画化されましたが)
 まあ黒澤さんサイドにも多分に理由があったそうですけど。

 といっても、70年代かギリギリ80年代までで
高倉健さんとか、任侠もののイメージだと思いますが
いつもなんですけど、視線が本当に低い。
 絶対鳥瞰や俯瞰した目線でファクトを描かない。
 まさに強きを挫き弱気を助ける、任侠の矜持。
 例え戦争映画を撮っても、兵士目線を絶対入れるでしょ。
 この辺は、逆に共感がめっちゃ持てる。
 だから、ヤクザっぽいとか言われるのかな、、。
 ただ、東映の時代劇だと新人の女優さんとか男優さんとか、
古株の結髪さんとか、衣装係の人にめっちゃイジメられるそうですけど。

 今作も、日雇い人足のお話です。まさに江戸時代底辺を生きる
人々のお話です。
 ごくごくかんたんに書くと、結婚のため武士の身分に憧れた人足が
武士のほんの小さなメンツのために詰め腹を切らされる。
 悲劇中の悲劇。

 これ、本当に脚本が良く出来ていてですね、、。
 構成といいますか、伏線、ネタフリ、タイミング最高です。
 私が最高と書いたのはですね、なんといっても、
 大川橋蔵さんのところに、肝心の揉める元となった槍が
届くタイミングが最高。
 そして、髻(もとどり)を切られた乱れ髪で練達の武士相手に
命がけの殺陣を展開するラスト!。
 この一連の殺陣、無声映画の頃の名作に「雄呂血」ってのが、バンツマさんの
映画であるんですが、乱れ髪もあって、それを思わせます。
 ちょっと武士サイドが弱すぎるかなって気もしますが、、。
 戦国の古来から、剣術って廻いが全てで槍に刀が勝てた
試しがないっていいますからね。
(残酷ですが、首を取るときだけ刀を使用したとかって説もあります)
 槍をもっていくときだけ、調子良かった、上方の大名の人足頭(にんそくかしら)も
そのあとは、へなーっとなっちゃうのは、ちょっとがっくりでしたが。
 どうせ、人足が居なければ、運べないんだから、ストみたいに
おっぽり出せば、と思うけど、違う人足衆をやとっておわりなんでしょうね。

 ただ、人権意識の薄弱だった近世ってこんな感じですよね。
 世の東西を問わず。
 西洋でも、長く、メンツや名誉をかけた決闘をずーっと
やってましたし、参勤交代の大名行列でも街道を譲る譲らないの
いつも大騒動になっていたっていいますから、、。
 
 これは、名作です。

 鑑賞されることを、絶対オススメします。

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評価
☆☆☆☆☆