映画と感想

簡単な映画評です。シネコンで見ようが、DVDで見ようがTVで見ようが、無慈悲に書いていきます(笑)。

タグ:淡島千景

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earl 

「早春」
監督・小津安二郎
主演・池部良/淡島千景/岸恵子

 前のお茶漬けの味のときは、こんななにもおこらない話を
よく映画にしたもんだと、書きましたが
一連の地味なお話し中心の小津作品の中では、
 一番話し的にシリアスかも。

 よく見ると住宅地は舗装されていなかったりと貧しそうに
見える時代ですが、高度経済成長期を迎えているのか
もう通勤ラッシュと所謂東京のかなり離れたベッドタウンから
の長距離通勤の時代が訪れています。
 その通勤仲間であるグループ交際していたはずの池部良さんと岸恵子さんが
不倫関係に陥り、池部良さんの奥さんである
淡島千景さんとの関係がぎくしゃく、しかし、転勤話しを期に夫婦関係の再生
を試みるというのがざっとした筋立て。

 今の時代だと、通勤圏はかなり広がっていますか、
社会の中での孤立化が進んでいるせいか同じ駅を利用する人々
で男女のグループ交際はちょっと考えられません。
 まぁ昭和の時代性とでもいいますか、小津さん的価値観といっても
いいのでは??。

 映画に関しては、いつもの小津節。
もう再三再四このブログの記事で言及しているので
簡単に書きますが、
1)
 画面ならびにカメラはほとんど、フィックスで固定。
2)
 カメラの位置は低い、日本家屋での人の座った目線の高さ。
3)
 とにかく全員、ほぼ抑揚のない棒読み。
4)
 会話のシーンでのカメラを正面に据えた単独の語りの切り返しの編集。

 この辺を抑えといてください。試験に出ます。

 小津さんと言えば、短い作品が多いのですが、この早春は長い。
そして、他の作品に比べると、枝葉とは言えなくもないですが、
若干全エピソード的に冗長な感じ。
 少々無駄が多い感じがします。他の小津作品が切り詰めて編集されている
からかもしれませんが、、、、。

 今回は実際に不倫関係になるということで、
今までの穏やかな家庭の小さな波風程度でなく、問題としてはめちゃめちゃ
大きくシリアスです。
 逆にラストよくこんな程度で収まったなぁという程度。

 しかしまぁ、男目線だからでしょうが、抑揚のない棒読み、
と言えども、奥さんの淡島千景さんが池部良さんを問い詰めるときの
怖いこと、怖いこと。
 あれ、ちょっと気の弱いというか、自信がないと白状してしまいそう。
 池部良さんもよく頑張ったと悪いことしてて頑張ったはないですが、
 あの時点で隠し通したな、、と。 
 
 今回は、池部良さんに付いてちょっと書こうと思うのですが、
この人、二枚目で出てきた割には、ちょっと怖いというか、
冷酷な感じをもっていますよね、、。
 クールで知的な感じと言えば、よく言ったほうで、
再放送で東宝関係の製作なのかな詳しくはしりませんが、
 加山雄三主演でやってた江戸の旋風という同心ものでも、
かなり異色の半分敵みたいな同心の役でした。
 それも、歳を重ねるごとにそんな面が出てきたような、、。

 結局、又同じことを書いてしまいますが、
これで解決したわけでなく、お互いわだかまりを抱えつつ年月を
重ねて、人間関係を深めていくのが、夫婦だったり家族だと
思います。
 それに、転勤後でやり直しかけたところで映画は終わってますし。
 うまく再生するとは描いていません。

 割とシリアスな事がおきて話が転がりそうで、
長く感じるということは、小津作品としては出来が
もう一つかもしれません。

関係記事。
青い山脈1949

浮草

麦秋

晩春

お茶漬けの味

評価
☆☆☆マイナスぐらい。

3
otya 

「お茶漬けの味」
監督・小津安二郎
主演・佐分利信/木暮実千代

 主演が原節子さんでも笠智衆さんでもないので、
ちょっと変化球の小津作品かと思っていたら、安定のいつもの小津作品でした。
 というより、小津作品、ど真ん中といってもいい。
 主演の佐分利信、木暮実千代のコンビが少し珍しいぐらいですかね?。
 いつも、冷静で余裕の夫、佐分利信さんに夫婦倦怠期でつんつんなってる
気の強めで独立心が強い奥さん木暮実千代。
 この夫婦がちょっともめて、勝手に遠出して出ていった奥さんが
帰ってくるだけ、というだけのよくもこんな企画が映画に成ったなと
いいたいぐらいの地味な話。
 しかし、そこは小津マジックなのか、スルスル退屈せずに見れてしまう。
 不思議、不思議。
 ただし、脇のというかその他のキャストは小津さんの人徳か、
はちゃめちゃ豪華。淡島千景さんに、鶴田浩二さんに、七人の侍の津島恵子さん。
 こうやって見ると、鶴田浩二さんってめっちゃ若いんですね、。
 もっと年上のイメージをもっていましたが、、、。
 佐分利信さんが老け顔で実年齢が謎の訳者さんなんですよね。
 木暮実千代さんは日本映画でも、VAMPといいますか、所謂妖艶な役柄が
多い女優。商売女とか、芸者さんとかその業態職種はどうあれ、良妻賢母と
いうより自立している女性役が多いです。そんな肉感的な人ではありませんが、
顔が多少濃いかな、、。
 それが主婦の役をやるというのも見どころの一つ、
が、やっぱりいい奥さんでは決してない。
 ただ、Wikiだと実生活では夫婦円満のめちゃめちゃ良妻賢母だったそうですが、、。

 
 小津ティストは相変わらずですね。カメラは低い。
 これ、前も書いたかもしれませんが、日本家屋で座ったときの視線なんですね。
 究極に普通めっちゃ多いバストショットがあんまりない。
 カメラはほぼ移動せずフィックス。会話のシーンもこの映画は割と少ないかなと
思いますが、セリフごとにバチバチ切ってカメラ対面で一人だけで演技させ
編集でつないでいます。普通、音だけは二人で会話したのを使うとか
ツーカメで背中から取るのに、これだけはどうしてこのへんてこりんなスタイルを
小津さんが好むのか謎。
 そして、どのキャストも、よく笠智衆さんのことを
いいますが、どのキャストも、セリフは超平坦棒読み。
 逆にプロの俳優さんに棒読みを演出するってどうやっての?って感じ。
 普通、これだけの特徴があると下手な学園祭とかの素人ヴィデオや
映画に見えるのに小津さん特有の味にまで昇華させているのは
プロの技なのか、、。

 この夫婦、佐分利信さんでどうにか持っている気もしますが、
それって男性目線でしょうか?。
 夫婦もそうだと思いますが、長く付き合っているカップルや家族も
ここから、ぱっつり完全に仲直りするって実はないんですよね。

関係記事。
七人の侍

青い山脈 1949 前篇 

浮草 

麦秋 

晩春 

獄門島 

評価 本当は4かなと思いますが、若い人は退屈かも。
☆☆☆。

 そんな感じもこの夫婦仲に出ている気がしました。
 


4
ba 

「麦秋」
監督・小津安二郎
主演・原節子

 以前、「晩春」の記事で、小津さんは下手だ。
って書きましたが、
 本作を見て、ちょっと訂正。というか
 
 ちょっと、見直しました。あいかわらす、カメラは低いし、
めっちゃ四角く撮ってます。と言っても、誰がとっても画面は四角ですが、
小津さんの場合、会話のシーンで真正面でバストショットで
ぱっちんぱっちんFIXで撮るので、漫画のコマだと
真四角みたいな気がするのです。
 相変わらず、カメラはほとんど動きませんが。

 今回は、「晩春」ほど、イマジナリーラインを越えた、
向かいあいの切り返しカットがあんまり気にならなかったです。
(私の体調が原因かな)
 というより、この、なんにもほとんど起こらない、脚本で
最後まで、観客の興味を引っ張っていく
脚本の力に脱帽。
 本当に、最初から最後までなんにも起こらない脚本なんですよ、、。
 最後に、のりちゃん(原節子)の結婚相手が決まるだけ、、。

 だのに、見続けられるこの演出力は、なんだ、、!。
また、感情的になったり、憎み合ったり、する人物も皆無。
大人がずーっとやっていっているだけ。
ドラマ性ゼロじゃない。
 それで、見続けられるって、これ、傑作かもしれない。

 原節子さんもいいけど、友人役の淡島千景さんや義姉役の
三宅邦子さんもいいですね、、。

 最後に、まとめ的に、少しだけ、
原さんって、晩年、老け役で登場せず、またマスコミにも
一切でなかったことでも有名。
 この企画の前は、短期間だけ活躍した女優さん的なイメージを
持っていたのですが、よく調べてみると、
 15歳で戦前にデビューし、最後は、忠臣蔵で40歳代ですか、、。
 ある意味、映画onlyで全力で駆け抜けた女優人生だったかもしれませんね。
やりきったぐらいの感覚はあったでしょう。
 さすがに、最後の40代の作品は容色は衰えた感がありますが
 この小津さんとの婚期を逃しつつあるハイミスの女性が
最後、思わぬ大逆転で美しすぎる花嫁姿を魅せて嫁いでいく
作品群がキャリアのベストかもしれませんね。

そんなことを思いました。

関係記事

「わが青春に悔なし」

「山の音」

「青い山脈 1949」

でも、星的には、
☆☆☆☆1/2ぐらい。
 
  




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